実際には16回あった聞き取りを『1回』に偽装
市教委は、教職員が直接聞き取りできたのは「1回」としていたが、保護者が同席し、本人と話したのは合計10日。1日に複数回あった聞き取りを含めると、すべて合わせると「16回」の聞き取りをしていることが確認できた。ただし、市教委は、保護者同席を含めて本人と話したことについて、「いじめ調査としての聞き取り」ではないとしていた。この点について、報告書素案は、〈このような見解は市教委独自のものであり、詭弁としか評価できない〉〈結論を導くためのこじつけ〉としている。
「最初は聞き取りの回数が『0』だったんですよね。裁判所に提出した資料では、『聞き取りができていない』って言っていたんですよ。市議会にも同じような答弁をしていました。しかし、担任と面談をしているので、それはないだろうということで、のちに『1回』に変わっています。
校長のメモにも、その面談の日のことが書いてあったんです。それで校長が認めました。そこで、『1回はできたが、十分な聞き取りができなかった』と(答弁が)変わったんです。実際には16回あったということは、まさにこれが隠蔽のやり方なんでしょうね。こうして、事実でないことを、事実として作っていったんでしょう。
市教委は資料を『突合しない』の一点張り
一番許せないのは、『調査ができていない』と嘘をついた点です。そのために、信ぴょう性を高めるために、被害者の親が直接被害児童に聞き取りをしないでくれ、と言ったことになっています。被害者の親が聞き取りを止めたから、学校としては調査ができなかったということを一貫して主張していました。被害者側に責任転嫁しているんです」
市教委は当時だけでなく、現在に至るまで、市議会で虚偽答弁を繰り返した。報告書素案によると、大阪高裁でいじめと認められた証拠資料をもとに、被害児童の父親は市教委に対して何度も面談を申し入れた。認識を改めてもらうためだ。当初、市教委は面談を拒否し続けたものの、その後、被害児童の父親と市教委4人との面談が実現した。報道機関も傍聴する中で行われたが、裁判資料と市教委の資料をあえて突合せず、いじめとは認められないとしていた。
「面談はマスコミにも公開だったんです。記者は『なぜ資料を突合しないんですか?』と何回も質問していました。市教委は『突合しない』の一点張りでした」
いじめの隠蔽の背景には、担任の指導力不足、学校としてのいじめの認識、情報共有の不備などがあったとされている。調査委としては、報告書は「素案」の段階だが、被害児童や被害児童の保護者に配布し、事実関係などを精査して、最終報告書を作成することになっている。