1ページ目から読む
3/4ページ目

いじめの判断を後退させた隠蔽工作

 この「3月15日の作文」は7人分しか市教委に保管されていない。報告書素案では〈少なくともこの7名の「作文」を得たことが、当時から現在まで担任に根強く残る被害児童及びその保護者に対する悪感情を決定づけ〉〈教育委員会の認識に少なからぬ影響を及ぼした〉とした。

「7人分しか残っていないのは不自然です。悪口を書いた7人分を担任がピックアップしたのか。それとも、市教委が7人分を保存したのか。いずれにせよ、7人だけが悪口を書いたのに、クラス全員が述べているかのように仕組んでいたのでしょう。この作文が、いじめの判断を後退させた根拠になっています。まさに隠蔽工作だと思います」

 小学校の生徒指導部会で担任は、被害児童への嫌がらせや金銭授受について報告していた。しかし、いじめとして対処していない。つまりは〈担任教諭は本件当時、いじめに対する感度が相当に低かったものと言える〉。また、〈校長をはじめとする他教職員との情報共有や協働意識も低く、教員として適切な対応ができていなかった〉と報告書素案は指摘している。

ADVERTISEMENT

「日常的に、子どもたちが『死ね』とか『ボケ』とか言っていることも、学校側は注意していません。そういう学校だったということです。担任が作成した資料には、『生徒指導部会に報告した』となっていましたが、資料自体、後付けで作られたもの。そのため、本当はどうだったのかはわからない」

「いじめかどうかを判断できない」という方針になった理由

 学校側が作成した「いじめ調査シート」には、言葉によるいじめ/からかい、いやがらせの言葉/遊びの中でのいやがらせ、集中攻撃、ボールを片づけさせる/学用品への落書き/学用品を投げる/暴力(廊下で引きずる)/金を受け取る/いやがらせ(遊びに寄せない)――などが記載されている。

破られた男子児童のノート ©渋井哲也

 つまり、当時の学校側の認識としては、いじめがあったことを認めている。これは、被害児童側の弁護士と学校側との面談にあたって作成された「Q&A」でわかる。しかし、市教委の指導主事が内容を書き換えた「市教委訂正版」の「Q&A」では、「本件は文部科学省定義による『いじめ』に該当するという判断ができない」と変わっている。

「市教委が判断したやり方は卑怯ですよね。これって神戸だけじゃなく、どこでもやっているのかもしれませんが。『一方的』じゃないというのは、いじめを否定する側には非常に大事なことです」

 以降、市教委としては、(1)立場を入れ替えていたこと(=お互いに言い合っていた)、(2)恐喝とは言えないこと(=脅迫されたと認められない)、(3)調査できなかったこと、(4)調査の続行が困難であること――を理由に、いじめかどうかを判断できない、という方針になった。