2006年2月、兵庫県神戸市の小学校で、当時小学5年生だった男子児童が、同級生から暴行を受けたり、約50万円の金銭を要求された。しかし、学校や市教委はいじめを認めてこなかった。この問題をめぐり、市が設置した第三者による「いじめの有無及びその対応を調査する委員会」が素案(全240ページ)をまとめたことがわかった。被害児童の父親が11月28日に会見し、明らかにした。

 報告書素案によって、学校や市教委は一度、いじめを認知したものの、組織的に隠蔽していった変遷が明らかになった。この姿勢が、裁判所への「いじめ・恐喝の事実があったかなかったかは判断できない」という回答になり、最終的には市議会への虚偽答弁につながった。

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一番の注目はいじめの認知の変遷

 被害児童側は、加害児童のうち3人の保護者を提訴して勝訴している。

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 大阪高裁の判決では、ノートや筆箱に「うざい」「死ね」「きしょい」「消えろ」「バカ、アホ、マヌケ」などと落書きをしたこと、家の鍵を隠したこと、「お前をいじめてやる」「お前はきしょいし、ノリも悪い。死んで欲しいから」などと言ったことなどの「いやがらせ行為」、K-1ごっこと称して殴る蹴るの暴行を加えたこと、ひっかく、廊下で引きずる、ボールを顔面に強くぶつける、押す、足をひっかけるなどの「暴行行為」、総額約30万円となる金銭授受(残りの二十数万円は、加害児童の保護者と和解し、返金済み)を不法行為とした。報告書素案では、これらを「一体のいじめ」と認めている。

 被害児童の父親は、「一番の注目はいじめの認知の変遷ですね。当時の教育委員会が一旦、『いじめを認めた』にもかかわらず、『いじめとは認められない』となったことを包み隠さず指摘しています。また市教委の対応も調査範囲ですが、市議会への虚偽答弁をするなど、隠蔽は現在進行形だということがわかりました」と評価する。一方で、「歴代の教育長は調査委の聞き取りに応じなかった。その点は非難されるべき」と話している。

取材に応じる男子生徒の父親 ©渋井哲也

食い違う学校側との認識

 06年2月4日、被害児童が自宅で同級生2人に1万5000円を渡した。そのことを被害児童の父親が見つけたことで、いじめが発覚した。学校は翌5日から、被害児童や加害児童の家庭を訪問して、関係した児童の聞き取りを始めた。学校側は、噂が広がっているために、学年集会を開催することを決めた。

 また、2月9日、被害児童が担任に「放課後、話がしたい」と申し出た。担任と生徒指導担当の2人が「なぜお金を渡したのか? なぜ言わなかったのか?」と問いただすと、被害児童は「余計にいじめられると思った」と打ち明けた。

 学校側の認識としては、その後の家庭訪問で被害児童の父親から激怒され、以後、学校側は被害児童単独での聞き取りは難しいと思い込んだ、という。