12月13日、ボートレースの「SGグランプリ」が開幕する。優勝賞金1億円は、公営競技としては競輪の「KEIRINグランプリ」に次いで高額となる。
約1600人いるボートレーサーのうち、SGグランプリに出場できるのは、その年の獲得賞金ランキング上位18人のみ。出場できるだけで大変な栄誉となる。今回、このレースに女子レーサーとして初めて挑むのが遠藤エミ(34)。
遠藤は今年3月、ボートレース大村(長崎県)で開催された「SG第57回ボートレースクラシック」で、女子レーサーとして初のSGレースの覇者となった。SG(スペシャルグレード)とは、競馬におけるG1(Jpn1)に相当する、ボートレースにおける8つの最上位カテゴリのこと。
同じ大村で開催されるSGグランプリへの出場を前に、その意気込みを語ってもらった。
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ただ目の前のレースで確実に勝っていくことに集中するだけ
過去にもSGで(上位6人による)優勝戦に出場した女子レーサーはいるが、優勝したのは遠藤が初。この快挙は彼女に何かをもたらしたのだろうか。
「うーん、あまり変化はないですね(笑)。変化がないのは自分に自信がないからなのかな、とも思っていたんです。でも、気持ちの面では強くなれたかな……という印象もあります。前よりは強い気持ちで走れるようになったので、それが変化といえば変化ですね。
とはいえ、決して満足できる強さではなく、『もっと強くなりたい』という思いのほうが大きい。いまでも大事なところで着(上位着)が取れない、勝ち切れないというのは、やっぱりそこに気持ちの弱さがあるからだと思うので」
ボートレーサーにとって、肉体的な強さや技術的な強さと同じくらい、気持ちの強さは重要だ。遠藤はそのバランスをどうとっているのだろうか。
「メンタルの重要さはわかっているんですが、そこをあまり意識して考えたことはないんです。ただ目の前のレースで確実に勝っていくことに集中するだけです。私の場合、若いころからレースで緊張することはあまりなくて、レースに出れば、人気やオッズに関係なく集中して走れるほうなんです。もともとそういう性格なのだろうと思っていたし、それはもしかしたらボートレーサーとしては有利なのかもしれないと考えていました。
ただ、SGの優勝戦ではさすがに緊張しました。前の日の夜は気持ちが昂ぶってなかなか眠れなかったし、優勝戦当日も珍しくそわそわして、自分でも『落ち着きがないな』って感じていました。私にとってはとても珍しい体験でした」
ボートレースはインコース、つまり1コースらのスタートが有利になる。SGボートレースクラシックでの遠藤は、予選・準優勝戦をトップで通過して優勝戦の1枠を手にした。見た目には危なげないスタートから逃げを決め、堂々のレース展開に見えたが、ボートに乗っている当人は反省の多いレースだったという。