自分で考えて動いた結果うまくいくと、楽しいし自信になる
ボートレーサーになるには、専門の養成所に入所して、1年間の厳しい訓練を受けて卒業しなければならない。軍隊生活に近いスパルタ教育に付いていけずに、せっかく入所しても脱落していく者は少なくない。しかし遠藤は、当時を振り返って「仲間ができたこと」の喜びのほうが大きいと語る。
「朝早いとか、色々な規則があってそれに慣れるのは大変でしたが、それに対して“過酷だった”という印象はありません。それよりもそこで一緒に学んだ同期生の存在は特別ですね。私の場合、参考にする先輩レーサーはいても、憧れの選手はいないので、養成所の同期の仲間が一番心強いんです。
デビューしてからも、最初は先輩方にいろいろと質問していましたが、あるところから『教わるだけではダメだ。自分で考えて動こう』と思うようになり、それからはあまり質問もしなくなりました。ボートレースって、自分で作り上げることが好きな人に向いた競技だと思うんです。モーターやプロペラを調整して、うまくいったときは本当にうれしいし楽しい。そして何より自信になるんです。
だから後輩に対しても自分から積極的に声をかけることはせず、訊ねられたら『私だったらこうするよ』って答えるスタンスです。それが的確なアドバイスになっているかは自信ありません(笑)。でも、ボートレースに限らず、自分で考えた末に答えを見つけ出したとき、それが自分自身の土台になっていくのだろうと思っているので、これからもその姿勢は変わらないと思います」
開催地は大村「運命的なものを感じないと言えばうそになる」
今月開催されるSGグランプリは、年間8つあるSGのなかでも最高峰に位置づけられる特別なレースだ。ここまでの獲得賞金上位18人にのみ参加資格が与えられ、優勝すると賞金の1億円が加算される。今期の開催地は、くしくも遠藤がSGボートレースクラシックで優勝した「ボートレース大村」だ。
「グランプリが大村での開催ということで、運命的なものを感じないと言えばうそになりますね。もともと大村は相性がいい水面なんです。この“相性がいい”というのは、“得意”というのとはちょっと違う。私の場合、同じ“相性がいいレース場”に江戸川があるんですが、ここの水面は苦手だし……。でも、相性がいいから成績が残せる。大村も同じで、江戸川のような苦手意識はないけれど、好きなレース場です。
そんな大村で初めて開催されるグランプリで走れる18人に入れたことが何よりうれしいし、出る以上は勝ちに行きたい。じつは私、グランプリを意識したのはちょうど1年前のことなんです。
去年のグランプリで同じ滋賀支部の馬場貴也さんや丸野一樹君が走っているのを見て、そのスピードに圧倒されました。『私も出たい、そして勝ちたい』って思ったんです。そこに出られるのだから、力を出し切って走りたい。いまは『こんな展開になるかな……』という想像に、そこで自分が勝つイメージを重ね合わせて思い浮かべています。いいレースにしますので、ぜひ大村へ応援に来てください!」
写真提供=BOATRACE振興会