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「男女一緒に走れる」競技だからこそ楽しい

「正直言ってレースのことを忘れ始めているんです(笑)。ただ、決して満足の行くレースではなかったことは確かです。最初の1マーク(旋回)は失敗しているし、道中も思うようには乗れていないので、決して会心のレースではないんです。いい流れにしっかり乗ることができたとは思いますが。だから反省点はあるけれど、優勝できたことは素直にうれしかった。

 リプレイ映像は見たけれど、1回か2回ですね。これはどのレースも同じで、勝ったレースを何度も見て喜びに浸るようなことはないんです。リプレイを見るのは、ミスした部分を確認して次に生かすため。ボートの上から見る視野とカメラが俯瞰でとらえる視野の違いがあるので、リプレイを見るとボートからではわからないミスに気付くこともあるんです。どんなレースでも小さなミスは必ずあるもの。これまで“ノーミス”のレースは1本もありません」

 

 女性初のSG覇者としていま、誰も見たことのない光景を見ている遠藤。しかし当人は、“女性初”という括りに「興味がない」と言い切る。ひとたび水面の上に出れば、男も女も関係ない。勝つか負けるかの戦いに必要なのは“強さ”であり、「女性だから」という逃げ道を作らないのが、彼女の強さを支えているのだ。

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「そもそもボートレースは『男女一緒に走れる』というとても珍しい競技で、そこが楽しいと思うんです。だから私は男女の差は気にしないし、女性だけのレースよりも混合戦のほうが好きですね」

休日の過ごし方は「ボートのために使うことはありません」

 つねに「強くなりたい」と思い続けて努力してきた遠藤の“日常”はどんなものなのだろう。レース場ではストイックにレースと向き合う分、休みの日にはボートのことを考えないように意識するようにしているという。その意識の持ち方も、またトップレーサーならではの経験から来る工夫なのかもしれない。

「休みの日は自宅でテレビを観たりしてゆっくり過ごしています。レースに出ている間は宿舎に寝泊まりし、外部との接触が禁じられるので、携帯電話も使えないなどの制限があるんです。そのこと自体には馴れてはいるけれど、やっぱり自宅に戻るとのんびりできていいですね。だから仕事が終わった瞬間に気持ちを完全にオフに切り替えるようにしています。

ボートレーサーは、モーターなどの調整も自ら行っている

 休日をボートのために使うことはありません。そうしないとせっかく家にいても気が休まらないので。趣味というほどのものはないのですが、自然に触れることが好きなので、キャンプにはよく行きます。海でも山でも景色のいいところに行くとストレス発散になるので、そういうところに出かけるようにしています。

 ただ、最近は自然に触れるのに適した季節が短いのが困りものですね。過ごしやすい春と秋は一瞬で過ぎ去ってしまう。これからの寒い時期は苦手です。暑いのが好きというわけではないけれど、でも冬に較べればまだ夏のほうがマシですね。

 食事は、昔は肉が好きでしたが、いまは全然食べなくなりました。何だか“食”に興味がなくなったような感じです。甘いものはもともと好きじゃなかったし、お酒は好きだけどあまり強くない。強いて言うなら“野菜が好き”っていうくらいですかね」