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北口には区役所、南口には庁舎。この形は…

 揃っているのは商業施設だけではない。駅の北口には川崎市麻生区役所があり、南口の駅前のペデストリアンデッキを進んでいくといつのまにか地上に移って交差点の角には川崎西合同庁舎(税務署や法務局が入っている)。駅から南東に向かって5分も歩けば、昭和音楽大学のキャンパスも広がる。行政施設に教育機関、まあとにかくこの町は何でも揃っているのだ。

 
 

 だからとうぜん人も多い。駅前のペデストリアンデッキの人通りは平日の昼間なのに途切れることはないし、デッキ下のバス乗り場にも長い列ができている(ついでに昼時には立ち食いソバ店にも長い列ができていた)。

 この町に暮らしている人はもちろんのこと、区役所があるくらいだから働く人も少なからずいるのだろう。昭和音楽大学のおかげか学生さんらしき若者たちの姿も目立つ。最近は地方都市を歩くことが多く、久々に東京郊外の町。これだけ活気に溢れていると、ナゾもへったくれもないよねえ、と素直に思う。横浜方面から地下鉄が乗り入れんとしているというのも、まったく納得の駅前風景であった。

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 駅を町のど真ん中において、その周囲に行政機関や商業施設、そして住宅地はさらに外縁に広がる。いかにも多摩丘陵といった起伏に富んだ地形だが、それを切り開いたり地形をそのまま活かしたり。マンションの類いも多いが、外縁部に行けば行くほど戸建て住宅中心の住宅地だ。その合間を見つけては公園も整備されている。

 東京都心への近さも合わせて考えれば、住環境としては実に優れているのだろう。住んだことがあるわけでもないので勝手なことは言えないが、日常の暮らしで不満を抱くことはそうそうなさそうだ。駅前は賑やかでも、住宅地メインの外縁部に行くほどに静かになって行くあたりもよくできている。

 

“新”百合ヶ丘ということは“旧”百合ヶ丘が…

 と、まあ手放しで褒めまくってしまったが、そもそもの疑問に答えねばならない。新百合ヶ丘駅は、“新”がつく。となれば、旧……といったら失礼ですが、何もつかない百合ヶ丘駅があるはずだ。

 はずだ、もなにもなく、百合ヶ丘駅は新百合ヶ丘駅のひとつ新宿よりにある。駅名からなんとなく察する人も多かろう、どちらの駅も、戦後になって生まれたニュータウンの玄関口。もちろん百合ヶ丘駅のほうが先輩で、1960年に開業した。新百合ヶ丘駅は遅れること14年、1974年開業である。多摩ニュータウンに向かう小田急多摩線が開業するにあたって、分岐駅として新たに設けられたのが新百合ヶ丘駅であった。