文春オンライン

《官房長官、里親になる!?》「児相も僕のことは”里じい”だと…」大物政治家・塩崎恭久 が“里子”のために70歳以降の人生をささげるワケ

note

――とはいえ、千枝子さんはびっくりしたのでは?

千枝子さん(以下、千枝子) いえ、特に驚きませんでしたね。社会的立場の弱い人のために働きたいというのが塩崎の長年の思いでしたから、そう来たかと納得しました。私自身も大学で教育を専門にしていたので、地域における子供を育てる力が弱まってしまっていることにはかなり危機感を持っていて、普通の人たちがもっと子供とふれあえるような環境づくりができないだろうかと思っていたんです。自分が里親になると考えたことはありませんでしたが、夫の話を聞いてみて、この年齢でもできることがあるのであればやってみたいなと思って、「いいよ」と言いました。

夫人の千枝子さんはリモートで取材に応じた Ⓒ文藝春秋/撮影・山元茂樹

子供の人格形成には「特定の大人」の存在が大事

――不安なことや戸惑いはありませんでしたか。

ADVERTISEMENT

千枝子 特になかったですね。私の母も昔ながらの家の生まれで、伯父夫婦の養女に入っています。父も入り婿ですから、実子ではない子供を迎え入れるということについて、特に抵抗感はありませんでした。どの道、自分たちにできることしかできませんし、まずは里親という制度を広げていくことが大事かなと。私達の年齢でもこれぐらいできるよという見本になればと思ったんです。

写真はイメージ ©️iStock.com

――もともと塩崎さんが里親に興味を持ったのは、どういう経緯だったのでしょうか。

塩崎 本格的に里親の重要性を知ったのは、厚生労働大臣になってからです。それまでも児童養護施設や厚労省の職員から話は聞いていたのですが、大臣になってから開いた勉強会で、特定の大人との愛着関係のもとで安定して人格形成が行われていくことが子供にとって一番大事だということを学びました。これは「愛着理論」と呼ばれるものです。

 施設の職員はシフトによって代わってしまうので、子供にとって「特定の大人」にはなれないのが現実です。私自身は、難しい立場に置かれている子供の育て方として、里親あるいは養子という形こそが最も理想的だと考えています。諸外国を見ると保護された子供の8割が里親に委託され、施設に入るのは2割という国も多い。ところが日本は逆で、8割が施設で2割が里親。養子はごくわずかです。戦争孤児対策のために作られた旧児童福祉法では、現代の虐待等で施設に入ってくる子供をしっかりとケアしきれないということを知ったんです。

2016年、児童福祉法に大幅な改正が行われてから6年

――児童福祉法といえば、塩崎さんが厚労相を務めていた2016年に大幅な改正が行われていますよね。

以前から子供の福祉に熱心にかかわってきた Ⓒ文藝春秋/撮影・山元茂樹

塩崎 子供の権利条約に則り、子供にこそ健全な養育を受ける権利があるということをまず第一条に明定し、家庭養育優先原則というのを設けました。そして、実親のもとでの養育が無理な場合には里親や特別養子縁組、それらも難しい場合は地域に分散した小規模な施設への委託を原則とするよう、法改正を行なったのです。しかし、それから6年たった今でも地域に分散した小規模な施設への入所も進まないまま、大きな施設への新規入所が続いているのが現状です。里親や特別養子縁組の活用が格段に拡大されていく必要があります。