城氏が次期監督候補にあげた“3人の名将”
――具体的に、名前を上げるとすると誰が思い浮かびますか。
城 ユルゲン・クロップ監督(リバプール)がいいと思います。彼がドルトムントを指揮していた頃、奥寺(康彦)さんとドイツに行ったことがあって、そこで少し話をしました。日本や日本人に興味を持っていましたし、香川(真司)を始め日本人の扱いも慣れている。しかも、コミュニケーションというか、伝え方がうまい。
ドイツ人は勤勉で真面目だし、日本人にも通じるところがあるのでいいかなと思いますね。ジョゼップ・グアルディオラ監督(マンチェスター・シティ)も面白いけど、あんな高度なサッカーを日本ができるのかと考えるとちょっと厳しい。ディエゴ・シメオネ監督(アトレティコ・マドリード)もいいかなと思ったけど、守備から入るので、それじゃあ今までとあまり変わらないですからね。
――外国人監督を招聘する際に気を付けないといけないことはありますか。
城 優秀な通訳を採用することでしょう。通訳は監督と一心同体じゃないといけない。トルシエ監督の時は、フローラン・ダバディさんが通訳をしていました。トルシエは熱く語っているのにダバディさんはクールに訳していたけど、それじゃあ監督が伝えたいこととニュアンスが変わってしまいます。選手は通訳の言葉を信じるので、そこで誤差が生じてはいけない。監督と同じ熱量を持っていて、かつサッカーを理解して通訳してくれる人が必要だと思いますね。
――優秀な監督が来る際、選手に求められることは何でしょうか。
城 個々の選手は、今よりもさらに成長していくことが求められます。確かに今の選手は数年前よりも確実にうまくなっているし、平均値も高くなっています。でも、ベスト8を目指すのであれば、1対1の勝負に勝てる、ハイプレッシャーの中でボールをキープできる、そういう質の高い選手に成長する必要があります。そういう選手がいないと、良い監督が来ても話にならない。
あとは、何かに特化したプレーができる選手が出てきてほしいですね。今回のW杯ではフリーキックを蹴れる選手がいなかった。あとは、三笘みたいにドリブルが半端なくうまい選手とか、ヘディングは誰にも負けないとか、キックが抜群にうまいとか、そういうずば抜けた能力を持つ選手も必要です。そうしないと、世界と戦ってベスト8に入るのは厳しいと思います。
日本がW杯でベスト16の壁を突破するためには
――今後、日本のサッカーはW杯でベスト16の壁を突破し、ベスト8、さらにその先へと進むことができるのでしょうか。
城 今回のカタールW杯は、グループステージを首位で抜けた時点で、ベスト8を狙える最大のチャンスだと思っていました。ベスト16の対戦相手(クロアチア)にも恵まれたし、スペインに勝って勢いもあった。
実際の試合では、クロアチアはグループステージ3試合を同じメンバーで戦ってきて、みんな疲れていて、ミスも多かった。そんなクロアチアに勝てなかった。相手が強すぎてボコボコにやられたならまだしも、勝てそうな相手だったのに、このチャンスを逃したのは、本当に大きい。
次のW杯は、48カ国の戦いになります。今回よりも勝ち上がるのは困難になっていく。組み合わせにもよりますが、もしかしたら次はノーチャンスになるかもしれない。ラッキーなめぐりあわせは、勝負の世界で何度も起こるわけではないですし、今回は2大会連続で決勝トーナメントに進出できたけど、次も必ずできるとは限らない。
4年後、カタールW杯がベスト8を狙える最後のチャンスだったということがないように、個の成長や監督の選考も含めて最高の準備をしてほしいと思います。
(取材・文=佐藤俊)
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