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引きこもり青年の約3分の1はなぜ中学受験組なのか

 進学塾のクラスが下がると「こんなクラスでは恥ずかしい」と人目を気にしたり、「Sクラスみたいには頭が良くない」と比較の中で自信をなくしたり、「私は図形は苦手」と、要らぬコンプレックスを抱いてしまったり、親ばかりが塾の広報に煽られて、子はやらされ感に満ち満ちて日々を過ごしてしまったり……。このようなことが無いように、心がけるべきであろう。

 また、長年の現場感覚としては、小学校受験は、仮に志望校に落ちても、6歳という「今泣いていたのに、もう笑っている」年頃、すなわち心の回復力が強い時期であるし、所属した場所をすぐに好きになる頃なので、親さえ引きずらなければ、傷は浅いことが多い。

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 一方中学受験は、熾烈で厳しい世界なので、まずは、夫婦で十分に話し合って決断し、やると決めたならば、「なぜ挑戦させるのか」という目的を明確に言語化しておくと良いだろう。全ては子どもの幸せのためなのに、「偏差値の魔力」に飲み込まれそうになるのが現実だ。

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 30年以上に渡り、青年の引きこもりの現場で格闘し成果を上げ、『不登校・ひきこもりの9割は治せる』などの著書で有名な杉浦孝宣氏によると、引きこもりの青年の約3分の1は中学受験組だという。良かれと心から信じての受験が、結果として4つの落とし穴に突き落とすことになっていたのであろう。

 子の目の輝き、集中ぶり、主体的な取り組みかどうか……。子どもの心の健やかさにこそ焦点を当てた挑戦であってほしいし、合否を超えて、受験のおかげで確かに強くたくましくなったと確信できるような機会であってほしい。

◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2023年の論点100』に掲載されています。