あおり抑止のカギは行政のデジタル化
あおり運転の抑止に劇的な効果をもたらすのは、取り締まり基準の明確化よりも、むしろドライブレコーダーの映像をもとにした捜査体制の整備かもしれない。ドラレコ映像の有用性は警察側も認めるところであり、ウェブサイト上に専用の情報提供窓口を用意する都道府県警もある。全国で初めて専用窓口を設置した岡山県警には、1年間で1000件以上の情報が寄せられ、妨害運転を含む38件の検挙につながった。
さらに警察庁によれば、第三者による映像提出であっても妨害運転罪は立件可能だという。あおり運転の映像が巷にあふれる現状、被害車両以外からの映像提出は捜査の有力な手がかりとなるはずだ。とはいえ現状、この形での摘発件数は警察庁では把握されておらず、また厳罰化から1年間の妨害運転の摘発件数が全国1位であった大阪府警でも、これに該当する事例はまだないとのことだった。
警察側も捜査の充実化に向け新技術を導入
そもそも各都道府県警の情報提供フォームは、映像を受け付ける窓口としては相当に使い勝手が悪い。情報提供者は一度文面で詳しく状況を説明し、警察側の要請を受けてからでないと、映像を提出できないのである。
そこで期待を寄せられるのが、2023年4月の本格運用を目指し試験運用が開始された「110番映像通報システム」だ。スマートフォンなどを介し、通報者が撮影する映像をリアルタイムに共有するシステムであり、危険運転のほか現場状況の把握が初動対応を左右する事件・事故全般への活用が見込まれる。ただしこれは直通のテレビ電話のようなものではなく、通報者は通報後、SMSに送られるURLから、口頭で伝えられたパスコードを入力してログインする必要があり、被害に遭っているドライバーがその場で状況を伝えられるとは考えにくい。