荒野を走るダチョウの背中に乗ろうと、必死に追いかける少女――。1995年に放送されたポカリスエットのテレビCM。その必死さと、ダチョウに乗れた喜びを全力で表現する無邪気さに、心を奪われた人が続出した。出演しているのは、女優・タレントの中山エミリさん(44)だ。

 ポカリのCMをきっかけにお茶の間の人気者となった中山さんは、タレント、女優、そして司会者と幅広く活躍していく。特に、1990年代後半から2000年代前半にかけて数多くのバラエティ番組にレギュラー出演し、毎日のように彼女の顔をテレビで見かけた。

 今年で芸能生活28年を迎えた中山さんに、デビュー当時の話や芸能界での印象的なエピソードを聞いた。(全2回の1回目/2回目に続く)

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中山エミリさん ©石川啓次/文藝春秋

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芸能界デビュー前は「シスター」になりたかった

――1993年、中学3年生のときに渋谷でスカウトされたことが芸能界入りのきっかけだそうですね。もともと、芸能界に憧れはあったのでしょうか?

中山エミリさん(以下、中山) アイドルがキラキラしたステージで歌って踊る姿をテレビで見て「かわいいな」とは思っていましたね。でも、私もそうなりたいとまでは考えていませんでした。キラキラした習い事への憧れはありましたけど。

――キラキラした習い事?

中山 私は小学生のときに剣道しか習い事をしていなかったけど、周りの友だちはピアノとかバレエを習っている子が多くて。

 その子たちみたいに、かわいい衣装を着て発表会に出ることに漠然と憧れていたんです。ただ、それも「絶対に叶えたい!」というわけではありませんでした。

――では、芸能界に入る以前はどんな夢を持っていたのでしょう。

中山 昔はよく「シスターになりたい」と言っていたかな。幼稚園から中学校までキリスト教の学校に通っていたので、神父さんやシスターさんが身近な存在だったんです。優しくてかっこいいシスターさんに憧れていましたね。

――子どもの頃の夢は、芸能界とは全然違うものだったのですね。では、なぜスカウトを受けることに?