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大腸がんステージ3の妻(35)の「第二子がほしい」に、10歳年上の夫は「エッ」…闘病中の夫婦に走った予想外の“亀裂”

2022/12/05

 2018年10月下旬、妻の大腸がんが発覚した。耐えられそうにないレベルの腹痛に襲われて産婦人科に向かった彼女から「大きな病院で盲腸の検査をすることになった」とのLINEが入ってきた時、俺は新宿のユニクロで感動パンツを試着している真っ最中だった。

「今すぐ旦那さんにも病院に来てほしいって」

「盲腸の検査をする」と伝えられても「盲腸って薬で散らせるよな」と軽く受け止め、そのまま感動パンツの裾上げをお願いしていたら立て続けに「入院の可能性が出てきた」「これからさらに検査する」とLINEが入ってくる。「マジ」と返信しつつレジに並ぶと今度は“入院に必要なものリスト”が送られてきて、さすがに「これはマズイかも」と店員さんに謝って感動パンツを戻させてもらい帰路につく。

 早歩きで西武新宿駅に向かいながら妻に電話をすると「先生がすぐ旦那さんにも病院に来てほしいって」と言われるが、それでも「入院しても数日だろう」と軽く捉えていた。

 病院で先生から「盲腸じゃなくて腸閉塞」と告げられて「あ、そっち?」と妙な安堵を覚えたのも束の間、腸閉塞は大腸がんが引き起こした可能性が高いと続けられて急転。その日まで俺がまったく経験したことのないこと、信じがたいことが次々と突きつけられていった。

がんがわかる直前の、妻とのやりとり。試写で観た『ボヘミアン・ラプソディ』の素晴らしさに感極まっており、のんきに映画を勧めていた

お互いに「エッ、そうだったの!?」と驚く問題が

 自分よりも10歳年下の35歳であった妻ががんになるということ、腸閉塞が大腸がんの前兆として珍しくはないこと、検査のために大便が詰まった大腸を空っぽにできなければ一時的に人工肛門をつけなければいけなくなること……。

 AYA世代のがんについて耳にしてはいたが、30代とがんは結びつけがたいイメージがあった。ましてや手術はおろか、入院したこともなければ、病院なんて虫歯で近所の歯医者、風邪をひいて町医者に診てもらう程度の自分だっただけに、桁違いの驚き、戸惑い、恐れが到来したわけだ。

 しかもそのまま妻は検査入院するので、1年前の10月に生まれた息子の面倒をワンオペで見なければならない。それも初めてのことになるので、とにもかくにも混乱した。

 “病める時も健やかなる時も 富める時も貧しき時も 妻として夫として 愛し敬い 慈しむ事を誓う”のが夫婦。阿吽の呼吸であれこれ乗り越えてきたし、大腸がんも乗り越えるつもりだったが、ひとつだけお互いに「エッ、そうだったの!?」と驚く問題が持ち上がったのだ。