ソウルからひたすら北へ車で1時間半。BTSの最年長メンバー、JINが入隊した翌日の12月14日、陸軍第五師団前にある駐車場に響いていたのは、BTSの曲「DOPE」だった。
その前日の13日、JINは陸軍第五師団の新兵教育隊へ入隊した。第五師団は北朝鮮との国境、38度線南部に広がる京畿道漣川郡一帯を守る最前方部隊だ。
JINの呼びかけ通り、静かな入隊に
韓国では入隊一週間ほど前から夜9時のニュースでも取り上げられるなど関心が高まっていた。入隊時間は午後2時までと決められており、JINがメンバーと共に部隊構内に入ったのは午後1時40分過ぎ。韓国メディアやBTSのファンがYouTubeで生中継を行っており、世界各国から書き込みが続いていたが、画面で目立っていたのは取材の国内外のメディアと交通整理のための警官などの姿だった。現地にいた韓国紙記者が言う。
「第五師団ではファンが大勢来るのではないかと危惧して事故が起こらないよう、自治体、警察、消防に協力を要請し当日は300名ほどの警備態勢で臨みました。ところが、予想は大外れ。前夜からいたという強者ファンもいましたが、ファンも数十人ほどだったでしょうか。
JINや所属事務所が混乱を避けるために現地での見送りを控えるよう告知していて、JINも予定どおり車から降りての特別な挨拶もありませんでした。騒いでいたのはメディアだけだったでしょうか……。それにしても、JINなどの呼びかけ通りの静かな入隊となったことにほかの記者とともに驚いていました」
近隣住民からJINの入隊を歓迎する横断幕が
翌日14日、BTSメドレーを流していたのは、第五師団前にあるビビンククス店だ。ここは映画『鋼鉄の雨』(2017年)のロケ地としても知られ、遠方から食べに来る人もいる知る人ぞ知るビビンククスの名店だ。店員ももっとたくさんのファンが訪れると思っていたと言う。
「そうなんですよ。13日、店に来たのは記者ばかり。もっとファンがいらっしゃるのかと思いましたけど、あんまりいなかったですね。BTSの曲ですか? 歓迎と応援の意味合いで流しています」
第五師団は店の目と鼻の先だが、この音楽は聞こえるのだろうか……。第五師団へと渡る横断歩道付近では近隣住民からJINの入隊を歓迎するものと、BTSのファンダム「ARMY」を激励する横断幕が冷たい風に揺れていた。