組織上の綻びも見逃せない。モレノ氏がオーナーに就任して以来、現職のペリー・ミナシアンまでGM(ゼネラル・マネージャー)は5人目と、編成部門のトップが頻繁に入れ替わる状態が続いた。02年に世界一へ導いたマイク・ソーシアが18年限りで勇退して以来、今季のフィル・ネビン監督代行まで過去4年間で3人が現場の指揮を執るなど、戦術面や選手育成にも一貫性が見えてこない。
新オーナーの有力候補
今後、売却交渉がどんなペースで進むのかは不明で、長期化を予想する声もある。新オーナーの有力候補としては、NBA「ゴールデンステート・ウォーリアーズ」の共同オーナーでもあるジョー・レイコブ氏や、地元紙「ロサンゼルス・タイムズ」のオーナーを務めるパトリック・スンシオン氏らが挙げられているものの、売却時期を含め、不透明な状況は変わっていない。
今季の大谷は、1900年以降の近代メジャーで史上初の「規定投球回&規定打席」もクリアし、「二刀流」はさらにスケールアップした。その価値は、文字通り「エースと主砲の2人分」と評価されており、史上最高額の契約になることが確実視されている。たとえ、大谷が契約満了の来季までプレーしたとしても、「ヒリヒリするようなシーズン」を望む大谷がFAとなった場合、エンゼルスに明確な再建策が見えなければ、他の強豪球団を選択する可能性は高い。
エンゼルスは、大谷と長期契約を結び、トラウトとの2人を中心にチーム再建を進めて行くのか。それとも、袂を分かつ選択をするのか。
今後、本格化するエンゼルスの売却交渉と大谷の動向は、2023年オフまで波乱含みと言えそうだ。
◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2023年の論点100』に掲載されています。