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 それでも、チーム成績をよそに、モレノ氏が当時1億8400万ドル(約257億円)で買収したエンゼルスの現在の資産価値は、経済誌「フォーブス」によると、22億ドル(約3080億円)と試算されており、売却額は30億ドル(約4200億円)とも見込まれている。

大谷残留は「伏線」

 大谷の動向は、8月2日のトレード期限前にも話題を集めていた。というのも、エンゼルスは年俸3700万ドル(約53億円)のマイク・トラウトと30年まで、同3800万ドル(約55億円)のアンソニー・レンドンとは26年まで契約が残っており、資金的にはもはや限界に近い。FA後、年俸4500万ドル(約65億円)以上と推測される大谷に対し、長期の大型契約を提示することは困難と見られ、その前に放出する可能性が浮上した。

 実際、米国屈指の資産家スティーブ・コーエン氏が新オーナーとなったニューヨーク・メッツをはじめ複数球団が大谷獲得を打診し、エンゼルス側も交換要員リストを提示するなど、期限直前まで様々な情報が駆け巡った。最終的にモレノ氏が放出を拒否して収束したものの、そのわずか1カ月後に売却計画が明らかになったこともあり、大谷残留は球団の資産価値を維持するための伏線だったとも見られている。

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 大谷自身、将来的な移籍の可能性を否定しない。今季のトレード期限前、選手の立場として正直な胸中を明かした。

「エンゼルスにいる以上は、そこでやれることを今、しっかり頑張りたいと思いますし、今後どうなるかというのは自分では正直分からない。僕の気持ちというよりは、球団がどうするかによるので、左右できないところに対して、どうしようというのは特にないですけど、自分が出来ることをやりたいと思います」

 大谷の去就だけでなく、チーム再建の行方は、新オーナーがカギを握る。最大の課題とされる投手陣の補強をはじめ、中長期的な視点でチームを再建しない限り、低迷から脱出することは難しい。FA戦略だけでなく、アマチュアのスカウティング、メジャー最低レベルにランクされる選手育成システムなど、資金面だけでは解決できない改善点も数多い。