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 前出のインタビュー発言に続けて小栗旬は「一方で、『皆さん、振り返ってみてください。こいつも結構いいやつだったんです』という思いもあります。三谷さんがおっしゃるように、人間って急に変わるのではなく、じわじわと彼の中をむしばんでいった何かを、この作品は丁寧に描けていると思っています」と語るのだが、『鎌倉殿』は1人の青年の成長や達成を描くビルドゥングスロマンではなく、心優しい好青年だった北条義時が政治と権力闘争の中で魔に魅入られていく、「悪魔を憐れむ歌」として描かれた大河である。

 おそらく最終回では、北条義時という人物を通して作品のテーマが立ち現れるだろうし、それを表現できる俳優として多くの日本俳優の中から小栗旬が選ばれたのだろう。

2014年に、小栗が“あの人気俳優”とともに語っていた夢

 俳優としての小栗旬を語る時、何年にもわたり繰り返し引用される一冊の雑誌対談がある。もう8年も前、2014年に出版された『クイック・ジャパン』115号の中で彼は、一握りの俳優に仕事が集中し、裾野が広がらない日本の現状を憂え、若手の育成とともに俳優組合の結成による地位向上の夢を語っている。

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©️AFLO

 そして感慨深いのは、小栗旬が俳優組合結成の夢を語るその対談相手が、今や日本で最注目の俳優の1人となった、『エルピス』に出演中の鈴木亮平である点だ。

 今読んでも、というか今読むとなおさら手に汗を握るようなスリリングな対談である。

 俳優組合の結成について「でも、ここのところはちょっとね、負け始めています。(中略)組織に。やっぱり組織ってとてつもなくでかいから、『自分は誰かに殺されるかもしれない』くらいの覚悟で戦わないと、日本の芸能界を変えるのは相当難しいっすね」と語る小栗旬の言葉に、鈴木亮平は「僕はそこに関しては違う考えを持っていたりするんですけど、どの国のどの業界にも問題は必ずあるわけで、それを少しずつ変える努力をすることは必要だと思います。ただ、その方法が組合なのかなんなのか、僕にはちょっとわかんないですけど。僕はまだ世代全体のことを考えられる立場にいないというか」と答えている。

 薄氷を踏むような、ある意味では政治家の答弁のように配慮しつつ意志を示す言葉だ。