12月18日に最終回を迎える「鎌倉殿の13人」は、豪華絢爛の代名詞であるNHK大河ドラマの歴史の中でも規格外の一作だったと言えるだろう。

 ひとつはキャストの贅沢な使い方だ。佐藤浩市、西田敏行、大竹しのぶ、松平健といったレジェンド級から、中川大志、菅田将暉、坂口健太郎といった若手トップスターまで、普通なら先発完投でメインに据えたいような大物がまるで中継ぎ投手のように入れ替わっていく。

 新垣結衣、長澤まさみ(この2大女優が同じ作品に出演するのは「ドラゴン桜」以来ではないだろうか)、宮沢りえといった、1年間毎週見ていたいと思わされるヒロイン陣の出演も同様だ。

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 このオールスターゲームのような投手リレー、豪華なスター俳優の継投策を可能にした理由のひとつにはもちろん、日本最高の脚本家の1人である三谷幸喜への信頼とカリスマ性がある。そしてもうひとつは、短期間だからこそ逆にスター俳優がスケジュールを調整しやすいという現実的な理由もあるかもしれない。

 例えば長澤まさみに主演級ヒロインとして1年間のスケジュールを求めていたら、彼女が数年かけて実現を待ち続けたと言われる現在放送中の話題作『エルピス』(フジテレビ系)での主演と両立しなくなってしまっていただろう。

「僕に不快な思いや怒りを感じるお客さんが多ければ多いほど…」

 そうした目も眩むようなスター俳優の投手リレーの中で、1年間を通じて先発完投をつとめたのが主演、北条義時役の小栗旬だった。いまや日本映画界の中心にいる俳優の1人と言っていいだろう。

『銀魂』『新解釈・三國志』といった、バラエティと地続きのような福田雄一監督のコメディで数十億のヒットを支える一方、野木亜紀子脚本の『罪の声』では戦後史の暗闇に迫る新聞記者を真正面から演じて映画賞を受賞する。源頼朝を演じる大泉洋が象徴するコミカルさと、血なまぐさいシリアスさが同居する『鎌倉殿』の主演を1年間支え続ける俳優として、小栗旬ほど適任の存在はいないようにも思える。

小栗旬 ©️AFLO

「この先、義時をやっていく上で、第48回まで僕に不快な思いや怒りを感じるお客さんが多ければ多いほど、役者冥利(みょうり)に尽きます」

 TVガイドwebのインタビューで小栗旬はそう語っているのだが、実はここが『鎌倉殿』が大河ドラマとして特色でもある。歴史上の人物に感情移入し、その大願成就を手に汗を握って見届けるという大河ドラマの王道とは違い、血みどろの政治劇、善と悪が混濁するノワール大河として三谷幸喜は『鎌倉殿』を描いているからだ。