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〈『鎌倉殿の13人』最終回〉「ここのところはちょっとね、負け始めています」義時役・小栗旬が2014年に、あの人気俳優と語っていた“夢”

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2022/12/18
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鈴木亮平も「心強い」改革派の俳優へ

 2014年当時の鈴木亮平は31歳。ブレイクの始まりにいたとは言え、芸能界での立場はまだ弱かっただろう。もしも彼がこの対談で俳優組合の結成に同調する発言をしていれば、小栗旬がそうであったように、数年にわたって「俳優組合賛同派の鈴木亮平」とメディアに書かれることになっただろう。そしてそれは、まだ小栗旬ほどの基盤を持たない鈴木亮平という俳優の立場を日本の芸能界でより困難にしていたかもしれない。

 小栗旬もそのことは承知で、目の前で俳優組合の話題に距離を取りつつ改革を語る鈴木亮平に「亮平くんみたいな同世代の俳優の存在は、すごく心強いです」とエールを送る。それは今読んでもまるで、『鎌倉殿』や『エルピス』の一場面にも劣らない、息を呑むような政治劇の一場面にも見える。

 

 そして対談から8年の時が流れた今、『鎌倉殿』と同時期に渡辺あや脚本の政治劇『エルピス』を支える鈴木亮平は、小栗旬の言葉を裏切らない「心強い」改革派の俳優になったと言えるだろう。

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 白石和彌の『狐狼の血 LEVEL2』でも『エルピス』でも、鈴木亮平は物語の中で有害な男性性の匂いを纏う男を見事に演じている。その一方で来年公開の映画『エゴイスト』は、これまでの日本映画の同性愛者の描写と一線を画すと公開前からすでに高い評判が聞こえてくる。

 2014年の対談で小栗旬が「鈴木亮平と一緒にやりたい作品があるとスタッフに名前を上げると『亮平くんではまだ弱い』と言われる。もうちょい引き延ばすから、早く売れてくれ」とエールを送った俳優は、今や押しも押されもしない日本映画の看板俳優の1人にまで成長した。

新しい地図、のん復帰…芸能界の改革の風が吹いた8年

 俳優組合は結局8年経っても実現していないではないか、というのはその通りだ。だが日本芸能界における権力構造は今、大きく地殻変動の時を迎えつつある。公正取引委員会が名指しでジャニーズ事務所に注意勧告をするという驚天動地の報道が地上波ニュースを駆け抜けて以降、テレビがその名を呼ぶことも避けてきた「新しい地図」の3人は大河ドラマに映画にと大活躍を広げている。

 小栗旬と鈴木亮平が対談した2014年の『クイック・ジャパン』に能年玲奈の名でインタビューが掲載された女優は今、「のん」と名前を改め、着実に芸能界に復帰しつつある。この8年は日本芸能界にとって明らかに改革と変化の風が吹いた時代だった。

 小栗旬はその8年の間に、俳優としての地位をさらに盤石に固め、『ゴジラvsコング』など海外作品への出演も始めている。