11月末から都内各地や大阪などで連日のように行われた在日中国人による「ゼロコロナ」抗議デモ。なかでも現場で一際目立っていたのが、民主化団体「民主中国陣線」メンバー盧家熙(ルウ・ジアシー)さんだ。

 今年4月に来日したばかりの彼は、大多数の参加者が自身のプライバシーを厳重に守って活動するなか、テレビカメラの前で顔も名前も晒してデモ現場で演説を行っていた。中国生まれの彼が21歳にして政治運動にどっぷり身を沈めることになったのは、なぜなのか? 話を聞いた。

盧家熙さん(21歳) ©西谷格

「閲覧禁止の欧米メディア」を読み漁った高校時代

 中国・北京で会社員の両親のもと生まれ育った盧さんは、高校進学まではごく普通の中国人学生だった。転機となったのは、ネットを通じて海外の情報に触れ、中国共産党の“暗部”を知ったことだという。

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「天安門事件の発生と、その後の弾圧や隠蔽、チベットやウイグルなどの問題を知り、被害者たちに深く同情しました。中国共産党の問題のみならず、人類社会の人権侵害という普遍的な問題に関心があるのです」

 中国では天安門事件に関する情報のほか、TwitterやYouTubeなど西側メディアは検閲によって遮断されている。それでもVPNと呼ばれる迂回回線(有料のものが多い)を使い、アクセスすることは可能だ。盧さんはVPNを使い、中国国内では閲覧が禁じられている欧米メディアの情報を読み漁った。仲の良い友人たちと、熱っぽい政治談義を語り合うこともした。

 VPNによって欧米由来の発禁情報に触れることは、現在の中国の若者にとって、それほど珍しいことではないようだ。ただ、多くの人は深追いをしない。なぜ、盧さんはその世界にのめり込んでいったのか。

「正直、自分でもよく分かりません。人それぞれ興味の方向は違うと思いますが、私の場合はたまたま政治的なことだったんです」