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「もう中国に帰るつもりはありません」警察に1ヶ月拘禁されたことも…《21歳・青年活動家》が語った「思想弾圧のリアル」

2022/12/22
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 中国で運動を続けるのは難しいと考えた彼は海外渡航を決め、今春、来日した。現在は日本語学校の学生として生活しており、来夏に卒業予定だという。

「運動が忙しくてあまり授業に出席できておらず、来年ビザが更新できるかどうか心配しています。ビザが更新できなかった時にどうするかは、その時考えます」

 現在は両親から毎月15万円の仕送りを受け、都内で家賃6万5000円の部屋で一人暮らしをしている。

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「もう中国に帰るつもりはありません」

 今回のデモが行われた際は、直前に中国大使館の職員を名乗る男から電話が来た。「集会を行う目的は何ですか?」「生命を守るためにゼロコロナが必要だという人も大勢いる。自分の考えが本当に正しいと言えるのか、よく考えて欲しい」などと諭され、中止するよう促された。

 北京で暮らす両親のもとにもしばしば公安関係者が訪れ「息子さんをきちんと管理するように」と指示を受けているという。 

抗議デモ中の盧さん ©西谷格

「海外で活動している民主活動家は、中国に帰国しようとしても、航空券のチケットが強制的にキャンセル扱いになり、帰国できなくなるようです。私もそうなるでしょう。とはいえ、もう中国に帰るつもりはありません」

 学校や仕事といった現実世界のやるべきことに身が入らず、デモ活動そのものに居場所を見出しているようにも見え、その危うさは拙著『香港少年燃ゆ』で描いた一人のデモ参加者にも通じるところを感じた。

 声高に政府批判を叫ぶ姿は時に周囲から浮いてしまい、軋轢すら生んでいるようだ。「ゼロコロナの転換」にゴールを設定していた一般的なデモ参加者から見れば、彼の主張は過激すぎてついて行けないのだろう。日本では一党独裁の終結を目指す民主化団体『民主中国陣線』日本支部のメンバーに加わっており、中国共産党への抗議活動を続けている。クリスマス(12月25日)にも、都内でデモを行う予定だ。

 とはいえ、盧さんのような変わり者が居続けることによって、中国の民主化運動の火が辛うじて消えずにいるのも事実だ。場当たり的に我が道を行くその姿は、時にApple社の往年のコピー「クレイジーな人々(The crazy ones)」をも想起させる。

 日本で過ごす日々のなかで、盧さんは何かをつかみ取ることができるだろうか。今後の彼の人生はどうなっていくのか、気になるところである。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。次のページでぜひご覧ください。

香港少年燃ゆ

香港少年燃ゆ

西谷 格

小学館

2022年12月1日 発売

「もう中国に帰るつもりはありません」警察に1ヶ月拘禁されたことも…《21歳・青年活動家》が語った「思想弾圧のリアル」

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