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「危険すぎる中国産食品」から身を守るために、食品の「加工度」を下げよう

『中国食品を見破れ スーパー・外食メニュー徹底ガイド』

2018/01/30
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なぜ残留農薬が検出されるのか

 農作物に代表される中国の食材には、なぜ残留農薬などの汚染がつきものなのか。そこには、中国農業の抱える独特の理由があります。

散乱する農薬の空き容器 ©高橋五郎

 中国では土地が公有制なので、農地は農民のものではありません。使用権が与えられるだけです。しょせん借り物なので農民は農地に愛着をもつことができず、土壌を改良して生産性を上げるという意欲をもつことができません。

「競り」や「相場」が存在しない=値段は買い手の言い値次第

 流通制度にも欠点があります。日本では、いい作物を作れば収入が増えるシステムがあります。同じ野菜でもS級やA級とランク付けされ、高い値段がつくわけです。しかし中国では、まとめて1キロいくらといった取り引きが主流。加えて日本のような卸売市場がなく、「競り」や「相場」が存在しないので、値段は買い手の言い値次第。農民にとって、苦労や努力が収入に反映される仕組みになっていないのです。

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 出荷を調整する機能もないので、豊作だとたちまち値段が暴落します。しかし有効な補償制度がないので、損失は農民がもろに被る。凶作の場合も、同様に補償がありません。日本には野菜価格安定制度があって、生産者を保護しています。中国政府が農業の安定と発展を考えるなら、こういう制度を採り入れるべきでしょう。

 耕地面積に対して灌漑設備が整っている割合を、灌漑率といいます。日本は70%ですが、中国は30%未満。「天水農業」といって、天気頼み、雨頼みなのです。

 全土で地下水が枯渇しつつあり、井戸は数百メートル掘らないと水が出ません。その深さの地下水は、塩分などを含み、それを撒くと、農作物には悪い影響が出ます。

 そもそも、土の質が農業に向いていないのです。私は何度も中国各地の農村へ出向き、畑や田んぼに入って土の状態を確かめています。日本の畑の土は、摑めばフワッとしています。しかし中国の畑の土は、グラウンドのように固いところが多い。だからこそ土壌改良が必要なのですが、農民はその気にならないので、生産性も上がりません。

汚水が農業用水として使用されている ©高橋五郎

 また農民に対して、そうした改善策を組織的に指導する仕組みがありません。農薬の希釈度や使う時期などを、農民たちは独自に判断しています。袋の説明書きなど、読む人はいません。農民専業合作社という、日本の農協に近い組織はあるのですが、収穫物を集めて売ることだけに特化していて、指導、啓蒙する力が非常に弱い。そこには、農民が組織化することを政府が嫌うという、中国独特の事情があります。

中国では現在も、肥料に人糞が使われている

 そもそもなぜ、大量の農薬を使わなければならないのでしょうか?

 中国ではいまも、肥料に人糞が使われています。本来の有機肥料は家畜の糞尿を堆肥化させたものですが、中国では畜産と野菜栽培が別々に行なわれているので、家畜による有機肥料を得にくい。自然と、手軽な人糞を使うわけです。しかも本来は、80日ほど地中で寝かせて発酵させる必要があるのですが、そうした知識や習慣がありません。土に混ぜ、生の状態で畑に撒くため雑菌や寄生虫が繁殖しやすく、結果として農薬を大量に撒く必要が生じるのです。それが中国のどの地方でも、いまなお伝統的に行なわれている農法です。

 中国でも日本と同様、使ってはいけない危険な農薬が決められています。たとえば、かつて日本でも使っていたDDTなどの有機塩素農薬がそうです。しかし、使われていないはずの農薬について、今でも国が検査しています。その理由は二つ。以前に使っていた分が土壌に残っていて、野菜が吸い上げている可能性があるから。もう一つは、製造禁止になった農薬が、いまも堂々と売られているためです。理由は簡単で、効き目が強いから。インターネットで簡単に購入できるし、禁止されたはずの殺虫剤や成長ホルモン剤などを看板に掲げた小売店もあるのです。

 こうしたさまざまな問題点を、中国政府はもちろん把握しています。しかし根本の問題を突き詰めると、農地の所有制度にたどり着く。これは社会主義の根幹にかかわる部分ですから、効果的な対策は見つからないのが実情です。

 私は、中国政府は農業投資、特に土壌改良のための投資が足りないと考えています。しかも投資資金が必要な場所へ届かないことが、また問題。地方政府が農地を取り上げて宅地に転用し、マンションなどを建てる資金に流れてしまうのです。そのほうが地方政府としては儲かるからです。