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メーカー等の検査結果は信用できるか?

 最近では、鶏肉や家禽の肉は、加工した調製品として輸入されるケースが増えています。野菜も生食用から、加工されたものに変わってきています。加工度の進んだ食品ほど、輸入量は増えているのです。

 ところが、食品メーカーや外食チェーンは、「自社基準に基づいて生産・検査を行なっているから、問題ない」と胸を張ることが多いでしょう。農業や農薬の知識をもつ日本人の担当者が現地に赴き、つきっきりで畑を管理するのなら、安心できるといっていい。しかし実際は、現地の契約企業や農場に委託したきりの場合がほとんど。現地視察を行なっているといっても、あちらはしたたかですから、そのときだけ注文通りきちんと管理された一部の畑や工場に連れて行く程度のことは常識です。

 残留農薬の検査は、出荷時に中国政府が行ない、輸入時には厚労省が抜き取り検査を行なうことになっています。輸入する食品メーカーや外食チェーンの自主的な検査もあります。

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 100束のほうれん草のうち、1束だけに農薬がついている状態を「違反率1%」といいます。細かい説明は省きますが、統計学的にいうと、違反率が1%だと証明するためには、299束のサンプルを検査しなければなりません。違反率が低いことを立証するには、できるだけ多数のサンプルを検査する必要があるのです。サンプル数が少なければ、違反を捕捉できる確率が下がることになります。実際にどのくらいのサンプル数が検査されているのか、私は疑問に感じています。大量の検査は、時間と費用がかかりすぎるので現実的ではないからです。

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 また通常、食品メーカーや外食チェーンが「きちんと検査しています」と言う場合、残留農薬に限った話のことが多い。米には重金属の検査が課されていますが、野菜の検査項目として定められているのは農薬だけ。ヒ素、カドミウム、水銀、亜鉛などの重金属、また成長ホルモン剤や抗生物質などの添加剤については、検査の義務がないのです。

 重金属が野菜に含まれる原因として、農薬や化学肥料の成分に含まれている、PM2.5による土壌汚染などが考えられています。先ごろ中国南部で、カドミウムに汚染された「毒米」が問題になったのは、前述した通りです。

爆発するスイカ、成長ホルモン剤で育った「促成チキン」

 中国では2011年、畑のスイカが次々に爆発したことがありました。原因は、成長ホルモン剤の過剰投与といわれます。仮にあのスイカが、日本に輸入されるとしたら? 成長ホルモンを含む添加剤の検査は課せられていないのですから、ノーチェックのまま入ってくる可能性があります。

 鶏肉も同じで、普通は生まれてから出荷されるまで、約2カ月かかります。しかし中国では、45日で出荷できます。成長ホルモン剤をエサに混ぜているからで、これが問題になったのが、ケンタッキー・フライド・チキンの現地法人でした。

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 添加剤には数百もの種類があり、日本で使用が許可されているものと、中国で許可されているものは種類が違います。加工度が上がって調味料を含む食品になった場合、その調味料にもあらかじめ添加剤が含まれています。こうなると、すべてを検査するのは不可能に近いでしょう。検査に時間をかけているうち、食品の鮮度は落ちてしまう。そもそも、食品メーカーや外食チェーンが中国産を使うのは、低コストを求めてのこと。なるべく検査にもお金をかけたくないというのが本音でしょう。

選ぶ食品の「加工度」を下げることで、安全度が上がる

 我々は、中国産食品をいっさい食べないというわけにはいきません。一方、国産品なら安全だという思い込みも、幻想です。消費者が自ら身を守る知恵のひとつは、選ぶ食品の「加工度」を下げること。さきほど触れたパターン1から4のうち、4よりは3、3よりは2へと加工度を下げるほど、安全度は上がるといえるからです。

 行政は、検査をもっと厳格にし、その結果を第三者がチェックする仕組みを作るべきです。また、日本がもつ高い農業技術を中国の農民に指導して、もっと広く普及させる努力も必要でしょう。一刻も早く土壌を改良して肥沃さを取り戻し、肥料・農薬の正しい使い方を教えて、安心して食べられる食品を生産してもらえばいいのです。

 食品メーカーや外食チェーンには、責任ある情報収集と公開が求められます。生産、加工、流通、保管の各段階でどのような問題があるかをチェックし、消費者の誰もがアクセスでき、判断できる方法で公開すべきです。行政、メーカー、消費者の三者が協力し合い、共有し合える情報公開が、日本では弱いといえます。

 消費者も、もっと賢くならなければいけません。完全に安心できる食品など存在しないことを自覚し、正しい知識をもたなければなりません。もはや、何もせずに身の安全を守れる時代ではないのです。

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