プロ野球楽天のオコエ瑠偉外野手(25)が12月9日に初開催された「現役ドラフト」で巨人に移籍した。
関東第一高時代に俊足、強肩で甲子園大会を沸かせたスピードスターも1軍に定着できないまま、プロ7年が過ぎた。伝統球団でラストチャンスに懸けることになった「未完の大器」。その覚醒に不可欠なものを、プロ入り時の監督の言葉を元に探った――。
才能開花は「ぎりぎりのタイミング」
オコエは今季、わずか6試合の出場に終わり、オフの秋季キャンプは不参加だった。そして11月末の契約更改交渉では年俸非公表の上、取材対応を拒否したことで、楽天が現役ドラフト要員としたのではないかとの観測が浮上していた。
果たして当日は、丸佳浩外野手の右翼へのコンバートで正中堅手の座が空いている巨人の指名となった。ドラフトは野球人生で2度目の経験だ。ドラフト1位入団した2016年当時の楽天監督で、辞任する18年途中までを共にした梨田昌孝氏(69)は「ポテンシャルが高いことは間違いないが、花開かせるには年齢的に、ぎりぎりのタイミングだ」と率直に感想を語る。
オコエは身長2メートルほどのナイジェリア人の父を持ち、楽天入団時は50メートル5秒96、遠投は120メートルで視力は2・0と、その身体能力の高さで打率3割、30本塁打、30盗塁の「トリプル3」を狙える逸材として将来を嘱望された。
しかし、浮き沈みが激しいメンタル面や指導者の助言に耳を傾けない姿勢が才能の開花を妨げた。1年目こそ開幕1軍入りを果たし、51試合に出場したものの、2年目以降は伸び悩み、今季も楽天に不足する貴重な右打者でありながら、球界屈指の外野陣の一角を崩せなかった。梨田氏は「こちらが意図した指導がなかなか通じないことがあった」ともどかしそうに述懐する。