4年に1度の祭典もついに幕を閉じた。サッカーW杯カタール大会では日本代表が大きな感動を巻き起こしたが、同時に絶賛されたのがABEMAでの本田圭佑の解説だ。後輩の選手にも「○○さん」と敬称を欠かさず、その理由をTwitter上で「スポーツ界の無意味な縦社会はなくした方がいい。関係が深くない先輩に偉そうにされると、ん? 誰?って思ってしまう」と明かした。
近年、キーワードとなっている“リスペクト”カルチャー。その浸透は、スポーツだけでなく、私たちの職場にもポジティブな影響を与えてくれるはずだと指摘するのは、『仕事は職場が9割』(扶桑社)などの著書がある組織開発専門家の沢渡あまね氏だ。
これまで400以上の企業や官公庁を見てきた沢渡氏に、その理由を聞いた。
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「無意味な縦社会」からの脱却
――なぜ「リスペクト」が、これからの職場のキーワードとなるのでしょう?
沢渡 本田さんのツイートにもありますが、「無意味な縦社会」とは、リスペクトの関係性がないところで上下関係を強いられることです。よくわからない誰かに、上司、先輩というだけで偉そうにされる。それが組織だと言う人もいるかもしれませんが、その無意味な縦社会を放置した結果、何が起こっているかというと、日本の一人あたりの労働生産性がOECD加盟38か国中28位との現実です。大体、ポーランドと同水準で、要因としては産業構造の転換の遅れなどもありますが、やはり職場環境の影響も少なくありません。
たとえばプレゼンテーション能力などは、デジタルネイティブな新入社員の方がベテラン社員よりも優れていることは珍しくありません。しかし、2年も経つと、「無意味な縦社会」のなかで、彼ら彼女たちから積極性や創意工夫が失われ、もの言わぬ消極的な社員、生産性の低い社員になってしまいます。どんなに高い潜在能力やモチベーションを持った働き手がいても、それを生かす環境や仕組みがなければ、成果は出ません。