クマは何を食べて生きているのか? クマの内臓をあさって、その中身まで見たことのあるベテラン猟師の言葉を紹介。
朝日連峰(山形県)の伝説の狩人・志田忠儀さんの貴重な言葉の数々を記録した『朝日連峰の狩人』(構成:西澤信雄氏)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)
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クマの手足の跡は区別がつかない
クマの手と足の跡は見てるだけでは区別がつかない。手の跡に足をそっくりのせるから、捕まえて見ると手の方が若干大きくて、足よりもガッチリしている。ウサギなんかは足の方がずっと大きいし、人間だって足が大きい。
足の向きは、若干内向きになる。遠くからカモシカの跡とクマの跡を見分けるには、カモシカは真っ直ぐつけるし、クマは1度外に回して、人間がカンジキで踏んだみたいになる。驚いて跳ねる時は、4足一緒になり、ウサギのように前2つそろわないけど、前すこしずれて後ろは2つになる。キツネでもイタチでもクマでも、跳ねた時はY字型に三角形になる。
クマは足が大きいと体も大きい。昔、皮を張った時の大きさだけど、足が5寸あれば5尺、6寸あれば6尺って言った。足の大きさが細みで5寸より、丸くて5寸の方が体はだいぶ大きい。
サルの足跡とクマの足跡は似ている。このへんではサルはめったに出てこない。サルの足跡見て、クマ出たからクマ捕りに行くべって、誘われて行ってみたらサルの足跡だった。大きくて似ているからね。ちょうど手の平みたいに足跡つけて、親指が真向こう90度開いている。クマはそう開かないし、爪の跡がはっきりしている。
クマは上りも下りも一直線に歩く
カモシカだと目的地に行くにも、エサなんかあれば途中で寄るけど、クマはこの倉からこの倉に行こうとすると、ほとんど直線に歩いているんだね。
キツネなんかも真っ直ぐだけど、においをとったりすると寄り道するからね。クマには人間以外に強い動物はいないけど、やっぱり倉の雪のない所から雪渓に上がる時は、自然に歩いているやつも、白い所に黒い体が出るのが恐ろしいみたいで、相当に警戒してね。すぐにポコポコなんて上がってこないんだね。かなり警戒してから、なるだけ早くスタスタ雪の上を横断して行く習性あるね。