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 だからクマは倉を登ってくるのは薮づたいでね、雪の上などめったに登ってこない。だから慣れた人なら、ここ来るなあって想像つく。

 クマを撃つ場所に立ってから邪魔な木を伐るわけにいかないし、なんとしても困るなあと思っていたら、木を踏みつけて来るもんなあ。だから結構撃てるものだったっけ。前の見えにくい木を倒しながら登ってくるのだから。下りなんかだと、柴をかかえてダァーッと乗るみたいな格好で滑って行くみたいだね。

 よく「クマに見つかったら下の方に逃げろ。クマは登りは速いが下りは遅い」とかいうけど、そんなことはない。ただ大きいやつだと、バカバカって走り方しないのだなあ。だから足場のいい所だったら100メーター、200メーターは逃げきれるなあ。薮とかなんかだと、あっちは商売だから、とてもね。

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 5尺とか6尺くらいの小さいのだったら、犬みたいにパッパ、パッパ跳ねる。大きいやつほど、ボッコリ、ボッコリで遅いのだなあ。ウサギの方がとてもとても速い。だから、ウサギは白いし、小さいし、速い。クマは黒いし、大きいし、遅い。だからクマの方が撃ちやすい。クマの手でウサギの体ぐらいあるのだから度胸さえあればクマの方が簡単だ。

クマがカモシカを襲って…

 クマはカモシカの肉を食べる。雪崩で落ちていたカモシカをクマが傾斜の上の方さ引き上げていたとかね。今クマを捕ると、背丈とか重量、身長、手足の大きさから内臓見て何食べていたかまで報告しなければならない。

カモシカ ©iStock.com

 で解体してみると、クマ狩りの時期だと5頭捕れば3頭までカモシカ食べている。毛とか、はなはだしいのはひづめまで胃の中に残っている。

 直接襲ったのを見てはいないが、雪崩で死んだのを食ってるのは何回か見た。キツネとかタヌキも来てカモシカの死体は食うらしいけどね。カモシカは雪崩でたくさん死ぬ。カモシカは特別天然記念物だから、死体を見つけて届け出があっても山奥で大変で行かんねいので、行ってくれはあって警察が来る。だからたくさんカモシカの死体を見る。

 最近の話だけど、クマ狩りの経験ある人が、ミズ採りに行ったら、クマがカモシカを襲って、血だらけにしていたって。通り越して上流に行ったんだけど、考えているうちに自分もやられるんじゃないかって逃げ出したら、足に石ぶつけて、骨接(ほねつ)ぎに行ったんだって。