古来から多くの症状に効き目があるとされる「クマの胆のう」とは、どれほどすごい薬なのか? クマの胆のうを何度も手に入れたことのあるベテラン猟師のエピソードをお届け。

 朝日連峰(山形県)の伝説の狩人・志田忠儀さんの貴重な言葉の数々を記録した『朝日連峰の狩人』(構成:西澤信雄氏)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)

何にでも効くと言われる「クマの胆のう」とはどんな薬なのか? 写真はイメージです ©iStock.com

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クマの胆を干すのも楽になった

 クマの胆のうは家で乾かす。今は電気コタツがあるから大変楽なんだ。

 昔は火鉢の上に吊り下げて、それを丁寧に干せば、破れてしまったってことないけんど、あんまり丁寧に干すと、1週間たつと腐って破れてくる。1週間で干し上がるように火かけらんねいの。あんまりかけると中が沸騰して破れるし、それがむずかしい。つぶすと大変だって、金目のあるやつだしね。

 それが電気コタツだと、温度が上がると自動的に消えて、平均にかかるからものすごく早く乾燥するんだね。普通のやつだと、3日ぐらいでまず乾くね。ここまでいけばよい。何もかぶせないし、そのまま乾かすのだね。

 他の家に頼んで、いい胆を楽しみにしていたらネコに持って行かれたっていうことあったね。金失ったより向こうの人が困っているのが気の毒で、今は全部自分の家でする。

胆は高価だけど何にでも効く

 今でもほしい人はいくらでもいる。クマ捕ったら胆がほしい、ってね。去年なんか捕れずに申しわけないことした。二日酔いなんかに使うようだ。効くらしいんだね。

 昔は腹痛なんかに一番効果あったし、サングラスなんかかけずにいると目やられるね。そんな時にも溶かして、表面に塗るとひと晩で治るね。1匁が今2万5000円ぐらいするかね。1匁なんてほんの少しだ。

クマの胆のう ©iStock.com

 今まで最高で30匁だね。普通で6、7匁じゃないか、10匁超せばいいやつだはあ。

 胆は体重ではわからない、ものすごい差があるからな。エサ食ってしまうとなくなるっていうしね、穴から出たばりだと大きいしね。ナラの実がよくなった年は胆が大きい、ブナの実がなった年は肉がいい。ブナもナラもなる年もあるけど、ナラだけの年もある、そんな年はクマの胆も大きい。

 胆は1回で米粒の3分の1ぐらい使うのだからね。1回だったらそこらの売薬よりずっと安くなるね。1匁となると高いけどね。ほんの少しを飲んだり塗るだけだからね。

 子供なんかだと強すぎるから、額に塗ったり、足の下に塗ると熱が下がるからね。本当によく効くんだね。「カクラン」っていうから、暑さ当たりと妊娠には悪いっていうんだね。それ以外は何にでもいいんだね。