昔は注射も薬もないし、クマの胆なんかものすごく高価なものだった。だから左沢あたりの財閥や商店あたりでは、大井沢の誰それさクマしめた時、何かきまりあったんでねいか。無尽講みたいに食料とか日当を手配するとか。なんかして、しめた場合は3分の2よこせとか半分よこせとかあったんでねいか。おれの時はなかったが話で聞いただけだけど。
冬眠から覚めたばかりのクマの胆は大きい
胆は外見ではわかんない。クマは冬眠すると、荒皮って、俗にマツヤニつけて、アリつぶして、固めて足の裏につけて出るのだって言うけど、あれ本当は半年間動かないのだからできるのだと思うけどね。足の下にガチャガチャについたみたいで、それ穴から出て1週間ほど歩くときれいに人の手みたいになるの。人の手みたいになったら胆少ないってね。こいつがまだ半分ぐらいあると、まだかなりあるなあって感じるね。
クマは出て食べ物食うと、胆汁が出てきて消化に作用するわけだね。だから食わないやつはパンパンにたまっているんだね。
クマは出てきた時は太っているね。11月の末ごろ捕ると、普通だと腹とかだけどこのころは全身に10センチぐらいのものすごい脂肪で太ってるね。だからあまり行動も活発じゃない。それで秋捕れる率多いのだけどね。太って歩きにくいのだね。だから秋のクマは4、500メーター行くとまた寝てるね。
冬眠してて、それが栄養になってて、ゆくゆくなくなるまで穴さ入って寝てるのだね。むしろ出て動き回るとその脂肪がとれてピンピン歩けるのだね。穴から出てきた時、目も当てられないくらいやせている、って本さ書いてあるけど、穴から出た時はけっこう脂肪が残っている。
「出遊ぶ」って穴から出て500メーターとか1キロとか、3キロぐらいまで歩き回ってね、そいつなんか見つけると、穴さ入っても黙っているね。脂肪落として自由に歩き回れるようになると、穴さ出る。
それぐらいではまだ、荒皮はついているね。エサもまだほとんどとらないから、胆の方も大きいね。だから太っている時に撃ったのはまだいい。