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「●●を襲って、血だらけにしていた」ベテラン猟師がクマの内臓をあさってわかった「驚きの中身」

『朝日連峰の狩人』 #3

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 それで博物館の先生と鳥獣保護課の人に話したら「ぜひそこへ連れてけろ」って3人で来てくれたんだね。細い沢に、立木があるの。地滑りで沢止まったの、ちょうどクマ1頭隠れるボサ(小さな薮)があってね。

 その下がカモシカの通り道で。ボサで待ってて、下に通りかかったの襲って、上に8畳間ぐらいの草付きある所を、クマがカモシカを引いて横切ったらしい。その上急な斜面だけど、そこも扇型に2列に草倒れていた。

 だから下で襲って、食べるために平地に移動したのだろう。もう残っていたのは3分の1ぐらいで、証拠にビニール袋とかゴム手袋とか準備していったけど、もう10センチぐらいの骨が2片あっただけだ。最初見た人は、3分の1ぐらい食べて、3分の2ぐらい残っているって言ってたから、その後も来て食べて行ったのだろう。

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 それ写真撮って、環境庁の報告になったのだけど、信州大学のクマで博士号とった人ね、本当に捕って食べたかって、わざわざ訪ねて来てくれてね。珍しいのだろう。

今まで捕れたクマでは24歳が最高年齢

 でもクマの死んだのめったに見たことない。一度、あまり大きくないので、骨格標本にして博物館にと木さ引き上げてくくっておいて、8月ごろ回収したけどね。めったに見ないものだ。

 だから50年ぐらい生きるものかと思っていたら、今まで捕れたやつは24歳が最高だってね。オリの中で30年生きたやつがおるってね。必ずしも年をとっているから大きいというのでなく、大きくなるのと小さくてもそれで終わりになるのがいるんだね。

 年齢は、今のところ文化庁で歯を切断して、年輪みたいにプラス1がそのクマの年齢、ってしているけど素人では何歳ってきっぱりとはわからない。

 だいたいだけど動物の年齢もわかる。年とると鼻先あたりの毛の生えてない所なんかがボサボサになってきて、ツメも真っ白でブラシみたいになったり、クマは真っ黒でも耳あたりに白髪(しらが)がなんか出てくるなあ。

 去年捕ったのは白髪のがあったので標本にしてもらっている。頭とか手足に4分の1ぐらい白髪が生えているのだ。遠くから見て白く見えるほどではないが、年いっているのではなく、白いサルがいるのと同じじゃないか。目は黒かったけど。

 テンとかほかの動物では毛皮が薄いのが若いようだ。テンの今年の子なんかは、毛皮触ってみると、かなり薄い感じがする。2年か3年かはわからないけど今年の子はわかる。

 タヌキも尾が細いのが今年の子だ。イタチなんかはほとんどが今年の子だ、12匹も子供生むからな。でも動物は1年で一気に大きくなって後はあまり大きくならない。クマだけだね、40貫、50貫って大きくなるのは。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

ヤマケイ文庫 朝日連峰の狩人

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志田 忠儀 ,西澤 信雄

山と渓谷社

2022年10月17日 発売

「●●を襲って、血だらけにしていた」ベテラン猟師がクマの内臓をあさってわかった「驚きの中身」

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