「緩和ケアで大事なのは、希望をなくさないことだと思います」
──医療者の間でも、緩和ケアに対する認識が違っている?
勝俣 そうですね。緩和ケアとは、「単に痛みや苦しみを軽減するためのケアであり、積極的治療が終わった後の終末期に行うもの」だといまだに誤解している医療者もいます。
緩和ケアで大事なのは、最期まで希望をなくさないようにすることだと思います。病気が治ることだけを希望にしたらつらくなりますが、QOLを大事にしながら、生活の中で何か大切なことや楽しみを見つけることも希望につながるんだと思います。
──希望ですか。
勝俣 やはり、最後の最後まで抗がん剤を続けて病院で亡くなるより、最期は家族に囲まれながら、穏やかな環境で過ごしたいと誰もが希望されるのではないでしょうか。QOLにこだわるのは、そういうことです。
──勝俣先生は、「メディカルライブ」を定期的に開催されていて、歌やギターがお好きなんですよね。先生ご自身が作曲した、『小さな喜び見つけよう』(作詞:大井公子)というオリジナルソングにも、「小さな喜びを、今日を生きる力にしよう」という歌詞が出てきますね。
勝俣 音楽は癒しになりますよね。音楽療法というのは、実は海外では盛んなんです。音楽療法はQOLを高めるというエビデンスもありますし、アメリカのホスピス緩和ケア病棟の中には、音楽療法士が正規の職員として働いている施設が数多くあります。日本で音楽療法士が常駐している施設は、ごくわずかしかありませんので、これも広がってほしいですね。
「がんができないこと」(作者不明)
がんは、できないことが多い。
がんは、愛を奪うことはできない。
がんは、希望を失くすことはできない。
がんは、信頼を弱くすることはできない。
がんは、平和を侵すことはできない。
がんは、友情を壊すことはできない。
がんは、記憶を失わせることはできない。
がんは、勇気を鎮めることはできない。
がんは、心を弱くすることはできない。
がんは、永遠の命を短くすることはできない。
がんは、魂を消すことはできない。
(勝俣範之『医療否定本の嘘』/扶桑社 より引用)
写真=平松市聖/文藝春秋