進藤 昔は「面倒見」っていう仕組みがあったんですよ。逮捕されて取り調べがあり、調書が完成したあとも身柄の拘束は続きます。そのときに、担当の刑事が用もないのにヤクザを取り調べ室へ連れて行くんです。当時は取り調べ室だけはタバコが吸えて、要するに「タバコ吸わせてやるよ」っていうことです(笑)。だから逮捕勾留の後半になると「面倒見はまだか、面倒見はまだか」と刑事が来るのを楽しみにするようになる。そして刑事は、「なんか重いの(拳銃の情報など)出してよ」みたいな形でタバコの見返りに組織の情報を取ろうとしてくるんです。
廣末 面倒見という仕組みは初めて知りました。でも警察とヤクザがある種の信頼関係を築いていたのは確かです。今では署内は禁煙でしょうし、そもそもヤクザと個人的な人間関係を築いて捜査するという手法は減っているのでしょうね。
「しっかり女の管理しとけよ。お前はやってないよな」
進藤 ヤクザだった頃、僕の彼女が覚醒剤をチンコロ(警察に密告)したことがありました。でも顔見知りのマル暴から「しっかり女の管理しとけよ。お前はやってないよな」と言われて、「おう、もちろんだよ」でその場を乗り切ったということもありました。そういう恩をヤクザに着せることで、いつか刑事は大事な場面で情報を入手しようと企んでいたんでしょうね。絶対に親交のあった刑事さんの名前は言えませんが(笑)。
廣末 そんな野暮な質問はしませんよ(笑)。ヤクザが減っていくこと自体はいいことだと思いますし、彼らが社会の大きな問題であったのも確かです。ただ「暴力団員」の数だけを見て半グレを無視していると、大きな問題に発展する可能性も高い。国は反社会的勢力の全容解明に向けて本腰を入れるべき時期にさしかかっていると考えています。(※後半に続く)