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事件の最大の謎は…

 警察は、エリサの奇妙な行動は、双極性障害という、エリサが患っていた病気に起因しているという見方を示した。

 薬を十分に服用していなかったエリサが双極性障害の症状に襲われ、誰かに追いかけられていると妄想し、その誰かから逃れるために屋上に行き、タンクの中に身を隠そうとしたところ、誤って落ちたのではないかというのだ。

 エレベーターの中で見せた不可解な行動も、誰かに追いかけられていると感じたために取った行動ではないかという。実際、エリサの姉も、エリサが時々誰かに追いかけられていると訴えることがあったと話していたようだ。

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 しかし、もし仮に誰かから逃げていたとして、最大の謎は、エリサがどうやって、屋上にあるタンクにアクセスすることができたのかだ。屋上に入るための扉はロックされており、鍵やパスコードを持っている従業員だけしかアクセスできないからである。

 また、安全上、屋上に誰かがアクセスした場合、警報器が鳴るシステムになっているが、その警報器を解除できるのは従業員だけ。また誰かがアクセスした場合、ホテルのフロントに通知が行くシステムになっていたという。しかし、ホテルでは警報器が鳴らず、フロントにも通知が行っていなかった。

 もっとも、火災時の非常階段を使えば、屋上には簡単にアクセスできたことから、エリサが非常階段を使った可能性も指摘された。実際、警察犬も、非常階段に通じる窓のところでエリサのにおいをキャッチしていたという。しかし、屋上では、彼女のにおいをキャッチできていなかった。

エリサが見つかったホテル屋上の貯水タンク ©AFLO

重量を減らすために服を脱いだ可能性

 仮にエリサが非常階段を通じて屋上に入ることができたとしても、巨大なタンクの中に1人で入るのは容易ではないとホテルのメインテナンス係は話している。また、タンクの中に入るには高さが約3メートルある梯子を上る必要もあった。

 水に浮かんでいた遺体が裸体で、そばにはエリサが着ていた服が浮かんでいたのだが、それも不可解だと考えられた。事故による溺死だったとしても、なぜ裸体なのか? これについては、捜査官は、タンクの中に誤って落ちたエリサが、水に浮き続けるためには重量を減らす必要があると考えて服を脱いだ可能性があるという見方を示している。

 しかし、結局のところ、どれも推測止まりだ。なぜ、エリサがエレベーターの中で奇妙な行動をしていたのか、なぜ屋上に行き、遺体が貯水タンクの中で発見されたのかは、わかっていない。