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ホテルと未解決殺人事件の関係性

 また、エリサの変死は、セシル・ホテルの黒い歴史と関係があるのではないかという見方もされた。セシル・ホテルは自殺や殺人が起きたり、連続殺人犯が宿泊したりした、ロサンゼルスでも恐ろしいホテルとして悪名が高く、Hotel Death(死のホテル)とまで呼ばれることもあったからだ。50年代、60年代は飛び降り自殺が相次ぎ、未解決の殺人事件も起きていた。薬物売買や売春といった犯罪の温床にもなっていた。

 1947年には、“ブラック・ダリア”と呼ばれた女優のエリザベス・ショートが殺害される事件が起きたが、ショートは殺害される前にこのホテルのバーで酒を飲んでいたと言われている。ショートの遺体は腰のところで半分に切断されていたが、この事件も犯人が見つかっていない有名な未解決事件の一つとなっている。

 1985年には、深夜、家に忍び込んで少なくとも13人もの女性を殺害したとされる、「ナイト・ストーカー」と呼ばれた連続殺人犯リチャード・ラミレスがこのホテルの最上階に住んでいた。ラミレスは殺人の証拠となる返り血を浴びた服をホテルのゴミ箱に捨て、半裸でホテルに戻っていたと言われている。

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超常現象がエリサを貯水タンクへと運んだのか

 1991年には、3人の娼婦を殺害したジャック・アンターウェガーというオーストラリア人ジャーナリストもこのホテルに滞在していた。

 自殺が多発し、悪名高き殺人鬼も住んでいたセシル・ホテルは、死を招く呪われたホテルとして悪評が高かったのだ。そのため、エリサは、霊や悪魔に取り憑かれたり、超常現象に襲われたりしていたのではないかという見方までされた。

 たしかに、エレベーターでのエリサの様子は奇妙で、両腕を動かしている時は、カメラに映っていない、目に見えない誰かと話しているようにさえ見える。エリサは霊や悪魔のような存在に追いかけられ、逃げ込んだ屋上の貯水タンクに誤って落ち、溺れてしまったのだろうか?

 警察犬はエリサのにおいを非常階段に通じる窓のところで見つけたが、屋上では見つけられなかったのも不可解である。エリサが屋上を通らなかったとしたら、どうやって貯水タンクの中に入ったのだろうか? 超常現象がエリサを貯水タンクへと運んだのだろうか?

 エリサの怪死はまた、鈴木光司原作の邦画『仄暗い水の底から』をハリウッドがリメイクした作品『ダーク・ウォーター』(2005年公開)のプロットに似ているとも言われた。また、当時、ダウンタウンで行われていた結核検査の名前が“ラム - エリサ”と偶然にもエリサと同じ名前だったことや、エリサの携帯電話が見つからなかったこと、また死後、なぜか彼女のブログが更新されていたことも奇妙だと考えられた。

 エリサの死は数々の謎を残したまま、来年、事件は発生から10年を迎える。