前に男子刑務所では刺青率がどれほど高いかの話を書いたが、女子にもそれは当てはまる。
いつだったか出逢った、20歳そこそこの女性被収容者は背中一面に派手な和彫りが入っていた。やわらかなお尻の部分まで彫り込まれた鮮やかな色は、まだあどけなさの残る細く白い身体にふさわしくなかった。
それは、かつて同棲して一緒に覚醒剤をやっていた男に誘われて入れたものだった。
いくら好いた男のすすめとはいえ、あの若さでそんな取り返しのつかない傷をつけることもなかろうに。拒否することを知らなかったのか、それとも自分自身もそれを望んだのか?
どんな理由だったとしても、やはりこれも自分を大事にできない、ひとつの自傷行為ととらえるべきなのだろう。
男子は“少年院に入った証”を欲しがる
若い男子には手の甲のタバコによる火傷、俗に言う〈根性焼き〉が目立つ。千度近くもある火種を押しつけるからにはそうとうな痛みを伴うはずだけれど、一部の少年たちの間では肝試しみたいな感覚で行われている。リンチの手段としても使われる。
それと並んでよくあるのが、小さな三つの点状の刺青。手の親指と人差し指の間に小さな点が正三角形に並んでいるのを見かけたことはないだろうか?
これは〈三点星〉と呼ばれる。少年院内で知り合った子たちの義兄弟の契りが起源。本格的な彫り師に依頼できない若者から広まったワルの習わしだ。
似たようなものに〈年少リング〉もある。左手薬指に指輪をまねたラインを入れるのだ。これは少年院に入った証とされ、もともとは更生を誓う意味があったらしい。後に大人になって結婚した時には結婚指輪でこのラインが隠れる仕組みになっている。
少年院は前科にならないのだから、わざわざそんな証拠を身体に焼き付ける必要はまったくない。成人したら過去など素知らぬ顔で平然と生きていけばいいものを、子供独特の反逆心がこうした自傷を起こさせる。
男女を問わずこれらの自傷は年齢の低いうちに始まることが多い。
それはつまり、思春期からすでに精神面に問題を持っていると言い換えることができる。
これには成育環境が大きく関係する。家族関係が良好にない子供は愛着障害や自己肯定感の低さを抱きやすい。そしてこれらは彼らを自傷へと駆り立てる。
犯罪と精神の関係は根深い。健全な心身を持つ人間は概して馬鹿げた罪を犯さないものだ。