そして中島さんも、ラスト○○賞を巡って大きなトラブルに発展した経験があるという。
「それは人気アニメのタイトルで、発売後すぐに完売したくじでした。最後の1枚を引いたお客さんに、当たった景品と一緒にラスト賞をお渡ししたのですが、その後、1枚くじを紛失していたことが発覚したんです。くじも見つからず、景品がひとつ余ってしまいました」
景品の処遇は販売する小売店に一任されているため、売れ残った景品を割引価格で売る店も少なくない。中島さんのコンビニでも、くじの紛失で余った景品を“くじ引きなし”の条件で、価格を割り引いて販売したという。
「その『わけあり商品』の購入を希望したお客さんにも、口頭で事情を説明し、ラスト賞の対象ではないと念押しして会計しました。すると翌日、その人が再び来店して『これは最後の景品なのに、自分がラスト賞をもらえないのはやっぱりおかしい』というクレームを入れてきたんです。
購入時に説明したにも関わらず、まったく聞く耳を持ってくれないし、渡せるものもないし……。結果的に、返金対応になりました」
○○くじは店側のデメリットが多い
ラスト○○賞は、上位賞と同等のハイクオリティな景品が用意されているケースがほとんど。そのため、最後の1枚にこだわる客はとても多いのだとか。
「僕の所感ですが、上位賞ほど早めに出てしまうのが“○○くじあるある”。そこで、A賞やB賞が出たあとも、お客さんの購買意欲を維持するためのシステムだと思うのですが……。
平日の昼間からくじを買い占めてラスト1枚を狙う“転売ヤー”っぽい人も見かけますが、スタッフは『転売ですか?』なんて訊けないので、防ぐことはできません」
現状、くじを企画している企業から転売対策の指針などは出ていないという。転売を防ぐシステムを企業側が構築してくれれば、本当にくじを引きたい人の手に渡るのでは、と中島さん。
「ただ、正直なところ『コンビニで○○くじを売らないでほしい』というのが本音です。くじを目当てに来るお客さんは、くじだけを引いて帰っていくし、くじがなければそのまま帰るので、店側が期待する『ついで買い』をする人は稀。トラブルのリスクや、販売の手間を考えると、デメリットのほうが多いんですよね」
最近では、オンライン上でくじを引き、景品が自宅に届くシステムを導入しているくじもある。その場でくじを引き、景品をもらうワクワク感は半減するかもしれないが、オンラインくじのように、より多くの人が快適に楽しめる仕組み作りが必要なのかもしれない。