分煙化が進む昨今だが、たばこをめぐるトラブルはいまだ後を絶たない。ほとんどの愛煙家は分煙ルールを守っているのだが、自分が気を遣っているからこそ、余計にルールやマナーを守らない喫煙者の行動が気になるようだ。その結果、本来はリラックスするための喫煙所が、新たなトラブルを生み出す火種になっているという。
そんな喫煙トラブルのエピソードを聞いてみた。
隣の席のカップルが、キッと抗議の目を…
2020年4月の改正健康増進法や、東京都受動喫煙防止条例の施行以降、街中の分煙は加速した。さらにコロナ禍による「密の回避」が奨励されるようになり、喫煙者の居場所はますます少なくなっている。都内在住の喫煙者・伊藤涼太さん(仮名)は、ある出来事で喫煙者の肩身の狭さを実感したという。
「新宿歌舞伎町のTOHOシネマズ新宿近くにある古い喫茶店での体験です。そこは昔ながらの小さな個人経営で、いまどきめずらしく紙巻たばこも吸い放題のまま。紙巻たばこ派の自分は非常に重宝していました。
ある日の午後、いつものようにこの店でコーヒーを飲みながらたばこを吸っていると、隣の席に20代と思しき普通のカップルが座りました。特に気にしていなかったのですが、そのうちカップルの女の子がゴホゴホ咳き込み始めて、男の子がキッと抗議の視線を向けてきた。何かを言われたわけではないけど、手で煙をあおいだりして、いかにも隣でたばこを吸われて迷惑って感じのジェスチャーをするんです。
あまりの理不尽さに『いやいや、ほかにもカフェはたくさんあるのに、わざわざたばこ吸い放題の店に来たのはお前らじゃん!』と心の中で悪態をつきましたが、言葉にできるわけはない。仕方なく黙ってたばこの火を消し、カップルが出ていくまで吸うのは我慢しました。
世間の嫌煙の風潮のせいで自分が喫煙者であることに卑屈になっていて、抗議の目を向けられるとすぐ『すみません』とたばこを消す悲しい習性が身についちゃっているんだと思います」