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吉野家役員の「生娘シャブ漬け戦略」発言が問題に…なぜ大炎上が起きる“昭和的価値観”が残されたままだったのか?

『炎上回避マニュアル』より #1

2022/12/31
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吉野家が炎上した原因

 マーケティング業界における著名人であり、吉野家にとっても功労者であるI氏は2022年4月、早稲田大学の社会人向けマーケティング講座の講師として登壇した。当該講座において、学期を通して取り組む主要テーマのひとつが吉野家のマーケティング戦略であり、I氏はその課題設定と講評を担当するという重要ポジションを任されていた。

 しかしその初回授業において、I氏は問題発言をおこなったとして、メディアを挙げての大炎上騒動となってしまう。

 受講生のSNS投稿をきっかけに発言内容は即座に拡散し、性差別的、人権侵害であるとの猛烈な批判が相次いだ。受講生の投稿によると、I氏は自社の若年女性向けマーケティング施策を、「生娘をシャブ漬け戦略」と表現し、田舎から出てきた右も左も分からない若い女の子を無垢・生娘な内に牛丼中毒にする。男に高い飯を奢って貰えるようになれば、(牛丼は)絶対に食べないとも話していたという。

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実際の対応と結果、本来あるべき対応とは

 I氏はこの発言を発端とした騒動により、発言の翌週、吉野家の常務取締役企画本部長職と、親会社である吉野家ホールディングス(HD)の執行役員から解任されたほか、翌日に実施予定だった同社の新商品および新CM発表会も中止となった。その他、社外アドバイザーを務めていたコンサルティング大手・アクセンチュアからも契約を解消。同様にパートナーシップ契約を結んでいたコンサルティング会社・M-Forceからも契約解消され、早稲田大学の講師からも除名されるという大騒動となってしまったのだ。吉野家は講師の発言と解任について、公式サイト内で次のようにコメントした。

 株式会社吉野家常務取締役企画本部長が、4月16日に開催された外部における社会人向け講座にて講師として登壇した際に、不適切な発言をしたことで、講座受講者と主催者の皆様、吉野家をご愛用いただいているお客様に対して多大なるご迷惑とご不快な思いをさせたことに対し、深くお詫び申し上げます。大変申し訳ございませんでした。

 当該役員が講座内で用いた言葉・表現の選択は極めて不適切であり、人権・ジェンダー問題の観点からも到底許容できるものではありません。当人も、発言内容および皆様にご迷惑とご不快な思いをさせたことに深く反省し、主催者側へは講座開催翌日に書面にて反省の意と謝罪をお伝えし、改めて対面にて謝罪予定です。

 吉野家はお客様にご満足いただける商品・サービスを追求し続けております。本件を受け、社内規定に則って当人への処分を含め厳正に対応を進めてまいります。また、当社は今後一層コンプライアンス遵守の徹底に取り組むべく、コンプライアンス教育の見直しを図り、すべてのステークホルダーの皆様に対し、高い倫理観に基づく行動をお約束します。改めまして、この度は大変申し訳ございませんでした。重ねてお詫び申し上げます。