――今、そうした自分の軌跡を振り返って、どう思われますか?
桃井 アキバ系の音楽を、美少女ゲームの体験版を貰いにくる人たちのための音楽を作るべきだと思って曲を作っていて、本当によかったなと思っています。結果として、今でもそういう歌をライブで歌うと、私自身もあのころの感覚に戻れるんですよ。当時の秋葉原の空気を閉じ込めたような音楽に、結果的になったなと。よく「音楽は時代を映す鏡」みたいな言い回しを聞きますが、UNDER17の曲もそうなってくれた気がします。音楽性は模倣され、一種のコモディティ化というか、ジャンルのようになったところもありますが、秋葉原に惹かれ、幼少期から青春期にかけて通い、「アキバ系の音楽をやるんだ」とはっきりと意識して活動してきた私が歌うからこそ意味がある部分も、残っているように感じますしね。
「『電車男』以前の、普通のものになる前のオタク文化があった時代の秋葉原に対する憧れ」
――たしかに聴き返すと、90年代から00年代にかけての秋葉原を象徴する楽曲になっている印象を受けます。
桃井 最近、サブスクで昔の作品がみやすくなっていますよね。それで『ナースウィッチ小麦ちゃんマジカルて』(※桃井さん演じる中原小麦を主人公にした、『The Soul Taker~魂狩~』のスピンオフ)を、当時のことを知らない若い人たちがみてファンアートを描いたり、コスプレしたりしてくれているんです。そういう反応を見ていると、「平成のオタク」への憧れみたいなものが、どうやら生まれ始めているような雰囲気があるんですよ。
――バブル景気の日本を経験していない世代や国の人が、そのころの街の雰囲気に憧れや郷愁を抱いてシティ・ポップにハマるのと似たようなことでしょうか?
桃井 そうかもしれません。一種のリバイバル的な受け止め方ですね。今はもうオタクが普通のものになってしまいましたが、『電車男』以前の、普通のものになる前のオタク文化があった時代の秋葉原に対する憧れというか。「あのころの秋葉原に行ってみたい」みたいなことを言われたりするんです。そういった人には私のライブにぜひ来てほしいんですけどね。「平成のオタク」の雰囲気が、今もそのまま残っているライブですから(笑)。(#3に続く)
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