文春オンライン

“一番の人気キャラではない158cmの像”が埼玉で完成…なぜ今も「15年前の深夜アニメ」で“日本初”の町おこしが生まれているのか?

2022/12/28
note

“「らき☆すた」頼み”にならない企画力

 オリジナルグッズを販売したり、「らき☆すた」の絵をあしらった神輿をかついだり、はたまたは作品に参加した平野綾さんら人気声優を招いたこともありました。

 一方で“「らき☆すた」頼み”に陥ることなく、さまざまなアニメのせりふを叫ぶ「オタク運動会」、アニメ好きの男女の出会いの場を設ける「オタ婚活」、コスプレをしたまま走る「コスプレマラソン」など、同地を訪れる人たちの嗜好を読み取ったユニークなイベントや企画を展開していったのです。

 あまりの拡大ぶりに他の自治体からも視察に訪れるようになり、2013年には企画の主体を担った鷲宮商工会(現・久喜市商工会鷲宮支所)が、地域で優れた事業を展開した商工会などに与えられる「21世紀商工会グランプリ」に選出されました。

ADVERTISEMENT

「21世紀商工会グランプリ」にも選ばれた鷲宮商工会(現・久喜市商工会鷲宮支所)

 今やアニメの舞台になった“聖地巡礼”は、多くの場所が紹介されるようになりました。しかし、地元側が能動的かつ持続的に企画を立案しているかというとそうとは言えないのが実情です。

 理由は、アニメの放送時がファンのピークになり、その時点では注目を集めるものの、アニメの放送が終われば勢いは衰えます。ファンの注目は次の作品に移るわけですが、普通の自治体や地域は“客離れ”に対して打つ手がなくなってしまうことです。

 克服するためには、アニメの放送後の「地元の動き」がカギになります。しかしこれが大変。

 作品を理解した上で、作品を知らない地元の人たちと折衝を行って理解を求め、ユニークな企画を立案する能力のある人が地元にいるのか。そのメンバーを支えるファンがいるのか。お金を動かせる地元の支援があるのか。そんなキーマンたちと十分なコミュニケーションがとれるのか……。アニメに興味がなく、知見のない自治体にすれば、なかなかハードルが高い事態なのです。

関連記事