落ち葉に火をつけ、市役所から大目玉
水と同じく子どもにとって取り扱い注意なのは火だ。当時、東京郊外に住んでいた橋本直子さん(仮名・40代)の家の前には林があった。橋本さんは子どもを保育園に迎えに行った帰りに、近所の子どもと2人でその林で遊ばせ、自身はママ友と立ち話をしていたそう。
「話していたら、パチパチという音が聞こえてきて、ふっと見ると林の一部が燃えていたんです。真っ青になって、子どもの名前を叫びながら林の中に走りました。すると、子どもたちが燃え上がる炎を前に、泣き叫ぶでもなく、驚いたような表情で呆然と立ち尽くしている。私とママ友は子どもを抱えて脱出し、火は騒ぎを聞きつけた近所の人が消火器で鎮火してくれました。
後から子どもに聞くと、林にライターが落ちていて、落ち葉に火をつけてみたところ、冬の乾燥も相まって、たちまち燃え広がったみたいです。幸い子どもたちは無事で、火事もボヤで済みましたが、市役所からはメチャクチャ怒られました」
さらに、「幼児は、とにかくすぐに走り出すんです……」とため息をつくのは、中山健介さん(仮名・30代)だ。
「息子が4~5歳の頃は、興味のあるものが目に入ると、周りもろくに見ないでいきなり走り出していました。手をつないでいないと、すぐどこかに走り出してしまい、スマホを少しいじっている隙に、姿が見えなくなって慌てて探したことは数知れず。終いには、よく顔を合わせる近所のおじさんが『あっちで遊んでたよ』と教えてくれるようになりました。
ただ、車の前に飛び出すなどヤバい瞬間もよくあった。そのため、5歳の夏、少し離れた場所にある交通公園に、夫婦で交代しながら毎日のように連れていき、道路で一旦止まることを徹底的に叩きこみました」
このように車や自転車などが溢れる繁華街や市街地は、子どもにとって、リスクに満ちているが、対人トラブルも見逃せない。
篠田祐子さん(仮名・40代)は、当時新宿区のタワマンに家族で住んでおり、そこは子どもでも少し自転車を走らせれば歌舞伎町に行くことができる距離だったという。
「学校が休みだったある日の午前中、子どもと一緒にそれぞれ自転車で走っていたら、前方を朝帰りらしいホスト風の男6人が一列に横に並んで歩いていました。
通れないので、小学校低学年の息子が自転車のベルをチリンチリンと鳴らしたところ、ホストの1人が『チリンチリンうるせーんだよ! このチンチン野郎!』と子どもに激ギレ。
息子は負けずに『だって道を空けてくれないんだもん。僕は悪くない』と言い返したのですが、そのホストが『このクソガキ』と肩を怒らして近づいてきたんです」
いい大人が子ども相手にする言動ではないが、なにせ相手は酔っぱらいだ。しかも、仲間がいるのでよりイキリっぷりに拍車がかかっている。
「このままだと子どもがボコボコにされると思ったので、『うちの子がすいません!』と形だけ頭を下げて、息子の自転車を引っ張って連れ去り、事なきを得ました。私が一緒で本当によかったです」
このように子育てに危険はつきもの。いつになっても親の気苦労は絶えないのだ。