それまでは、パソコン通信や個人サイトとしてのホームページの開設が主流で、匿名掲示板の元祖とも言える「あめぞう掲示板」から西村博之(ひろゆき)さんの「2ちゃんねる」の流行もありながら、いろいろなものがまだ過渡期でありました。
この何でもありの風潮の中で、当時「がんばれ! ゲイツ君」というマイクロソフトのWindows全盛に対するアンチテーゼとして、より民主的で自由なUNIX系のLinux OSの普及に寄与するべく、秋葉原民が一丸となって「LinuxのほうがWindowsより堅牢で安全で便利だよ」という啓蒙を頑張っていたのも甘酸っぱい思い出です。いくら技術者が良いと思ったものでも、最終的にはマーケティングがうまくいって普及したものが良いものなのだと痛烈な教訓を得たのもこのころです。
いま思うと、Web3やメタバース的なるものを古参ほど否定的に、うさん臭いものとして見る風潮が強いのも、自由で民主的なインターネットであるからこそ、かねて理想論が跋扈し、そのたびにみんな惑わされて右往左往したイタい歴史を思い出すからに他なりません。
「音声が勝つか、ネットが勝つか」という時代を経て
通信の世界では、いままで音声通話が王様であり一丁目一番地と信じていた大手通信会社の信仰を打ち破るIP電話サービスが次々と開始されます。いまや音声など全部デジタルが飲み尽くしてしまって当然と思っていますが、当時は「音声が勝つか、ネットが勝つか」という非常に不思議な二項対立で業界が語られていました。とりわけ通信会社は、べらぼうに高額な国際回線の利用で収益を挙げている時代が長くあって、多分みんな何が競争になり、今後どう利益を上げていけばいいのか分からないままケツを叩かれ、ビジネスに邁進をしていたんじゃないかと思います。
業界の秩序が生まれるのも、ユーザーに広くADSLが行き渡り、またガラケーでのサービス利用が急拡大していく中でショッピングが、ニュースが、乗換案内が、ゲームが、さまざまなアプリケーションと共に利用者と利便性の裾野を広げていきました。