辻本 いまの日本人は、ダンス教育の場を見ていても、みんな綺麗に揃えようとする。だから僕は、もっと自由に動いてみてと意識的に言うようにしています。
いつも思うのは、自然界でライオンに襲われたインパラの群れがわーっと集団で逃げていくような時、なぜ一匹ぐらい逆方向に逃げるのがいないのだろう?と。そんな一匹に僕はなりたい。
だから普段から人とは違う、意味のない行動をしたくなってしまう。人のいない地下鉄の階段でふとターンしてみたり、踊りながら山を登っていったり……そのくらいダンスが好きなんです(笑)。
綺麗にそろえなくていい、人と違ってもいい、もっと自由に
森山 トモさんが身体を徹底的に見つめていこうと思った原点って何ですか?
辻本 中高でやっていたバスケットボールですね。単純に遊び倒したいというストリートの発想の延長でダンスに入っていったから。
森山 遊ぶといっても、インラインスケートやりたいとか、スケボーやりたいとか、それぞれの世代でいろいろ楽しみ方があるけれど、それ以上に、トモさんの身体に対する目線の向け方って、ものすごい細かいところまで探求しますよね。集中の仕方が半端なくて。
辻本 いや、それを言うなら未來でしょ。一緒に「きゅうかくうしお」を立ち上げた頃なんて、深夜の10時から明け方まで、ほとんど水も飲まずに休みなくワークに集中していて。心の中ではいつも「早く休憩しろよ!」って思ってました(笑)。
森山 そんなことありましたっけ?
辻本 俺も集中力あるほうだけど、「うわぁ、この人集中力あるなー」って、本当にしんどかったもん(笑)。
僕たちのクリエーションで少し変わっていたのが、たとえば5~6時間の稽古があったら、動き出す前に3~4時間は喋ってましたね。いま世の中に対して何を思ってるか、どこに相違点があるかをまず探る。そこから、どういうダンスをやっていくか立ち上げていた。
森山 昔、トモさんがベジタリアンの話を執拗にするから、「もういいよ」って音を上げたこともありましたね(笑)。
辻本 一見無駄に見えるかもしれないけれど、最初からダンスを「見世物」にしなくていい、完成させるのは60歳くらいでいいから、ここでは存分に試みて大きく失敗することもいとわないというスタンスだったからね。
森山 そういう意味では、「きゅうかくうしお」の活動って、外に対して開かれつつもずっと実験的な場でした。ダンサーとして生きてきた現在地、定着しているステータスを塗り替えていきたい気持ちもあったよね。