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ふたりのダンスが“完成”されるのはいつになるのか?

森山 それって背景にあるハイコンテクストの違いもあって、欧米のコンテンポラリーにはバレエが文脈にあるけれど、日本においては実はそれが能や舞踏なのかもしれません。

辻本 なるほどね。歌舞伎は?

森山 歌舞伎のような大衆芸能の流れも汲んでいると思う。いずれにせよ、どこか自然派的なルーツを感じさせるんですよね。

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「きゅうかくうしお」のクリエーションで、愛知県西幡豆町の田んぼで踊ったことがありました。田んぼの踊りというのは極めて日本的で、農耕の文化からくる土を踏みしめる「田踊り」みたいなところから能が生まれたり、舞踏もまた土着のものとして生まれて来たりもしている。そういう原初の舞踏に僕もすごく興味があるし、再解釈してフォーカスを当てたい気持ちがあるんです。

 

辻本 僕のダンスの中には、ストリート、バレエ、舞踏の3つの要素があるんだけど、自分が一番しっくりくるのは舞踏。舞踏はなんでもありなんですよね。口開けて踊ってもいいし、片目をつぶっててもいい。テクニカルに踊ってもいいし、滑稽でもいいし、アート性が高い方向にもいける。何をやっても成立する幅広さがすごくしっくりくるんですよ。

森山 舞踏にたいする深いリスペクトのあるトモさんと何がやれるか、これからも楽しみです。2017年、それまで「きゅうかくうしお」の作品を統括してくれていたプロデューサーが亡くなったのを機に、キャスト・スタッフが垣根なく一つのクリエイティブチームとして模索していこうと決めた時、トモさんは「ここから10年やれる集団にしたい」と言っていたのが印象的で。

辻本 “完成させるのは60歳”という精神で(笑)、今後も一緒に模索していきたいですね。

 

(代官山蔦屋書店にて)
撮影 鈴木七絵/文藝春秋

生きてりゃ踊るだろ

辻本 知彦

文藝春秋

2022年10月25日 発売

プロフィール

辻本知彦 (つじもと・ともひこ)

 1977年、大阪府吹田市生まれ。18歳よりダンスをはじめ、2007年にはシルク・ドゥ・ソレイユに日本人男性初のダンサーとして起用され、同年『Presentation Fiat Bravo』に出演、2011年からは『Michael Jackson The Immortal World Tour』に参加し、27カ国485公演に出演する。2010年、森山未來と「きゅうかくうしお」を結成し、独自の活動を展開。NHK2020応援ソング『パプリカ』の振付を菅原小春と共作する。また、Siaの『Alive』日本版ミュージックビデオ(MV)での土屋太鳳への振付、米津玄師の『感電』MV、MISIAの『Higher Love』MV、CM「ポカリスエット」「UQモバイル」など、多岐にわたって活動する。

  

森山未来 (もりやま・みらい)

 1984年、兵庫県生まれ。5歳から様々なジャンルのダンスを学び、15歳で本格的に舞台デビュー。2013年には文化庁文化交流使として、イスラエルに1年間滞在、Inbal Pinto&Avshalom Pollak Dance Companyを拠点にヨーロッパ諸国にて活動。俳優として、これまでに日本の映画賞を多数受賞。第10回日本ダンスフォーラム賞受賞。2021年3月11日には京都・清水寺でのパフォーマンス「Re:Incarnation」の総合演出を務め、7月には東京2020オリンピック開会式でパフォーマンスを行う。2022年4月、神戸市中央区北野でのArtist in Residence KOBE(AiRK)の立ち上げに参画。10月にはパフォーマンス公演「FORMULA」で構成・演出・振付・出演を務める。2023年2月に神戸市内で開催されるアートイベント「KOBE Re: Public ART PROJECT」ではキュレーターを務める。ポスト舞踏派。