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そのギャラリーで佐藤さんがグループ展に参加していた時、くだんの男性客が訪れた。作品を一通り見てから、男性は佐藤さんに向かって、「あなたが作家さん?」と聞いてきた。あらかじめ要注意人物であることを知らされていたため、佐藤さんが用心しながら「そうです」と答えると、頭のてっぺんからつま先まで、ジロジロと値踏みするように見られた後、「じゃあ」とだけ言って去っていった。
男性は直後、隣のスペースに移り、そこで展示していた美大を卒業したての若い女性たちのグループに熱心に話しかけ始めた。
「あっちにターゲットを移したんだなと思いました。とてもわかりやすいなと……」
佐藤さんが見たギャラリーストーカー
そんな佐藤さんもギャラリーストーカーに狙われた経験がある。
佐藤さんが20代のころ、初めて個展を開いた時のことだ。50代くらいの男性客が訪れ、作品について佐藤さんに聞いてきた。
「最初は丁寧に作品をみてくれたのかと思い、嬉しくて説明をしようと思いましたが、途中からその男性の個人的な話、思想や生活の話になり、止まらなくなってしまいました。明らかに私の作品には関係のない話なのですが、まだ若かったため男性を拒否することが難しく、困っていました」
そばにいた別の若い男性がその様子をみかねて、「作品のことを聞いていいですか?」と佐藤さんに話しかけてくれた。それでも、男性客はしつこく佐藤さんにつきまとい、話し続けようとした。結局、佐藤さんが別の男性の方ばかりに話しかけ続けたため、男性客は諦めて立ち去った。