1ページ目から読む
2/4ページ目

 女性作家のSNSだけでなく、ギャラリーにも女性作家がいつ在廊するのか確認するメッセージが届いた。危険であると判断したギャラリーでは男性を出入り禁止にしたが、男性が無理やりギャラリーに入ってこようとしたので、入口に侵入禁止のポールを置くなどして対応した。

 それでも男性は入口で待ち伏せしていて、ギャラリーから出てきた女性作家と鉢合わせしそうになった。女性作家はとっさに柱の陰に隠れ、そのまま逃げて無事だった。

 女性作家にとっては、SNSという公開の場で、自分に性的な言葉を投げかけてくる見ず知らずの男性が待ち伏せしていたら、恐怖しか感じないだろう。

ADVERTISEMENT

 それ以後、中井さんはトイレや帰り道も、周囲の安全を確認しながら作家に付き添うようにしている。

「出待ちされたケースは初めてでしたが、それからは作家さんとお客さんを一対一にしないようにしています。危ないと思ったら間に割って入ったりします。作家さんの安全も大事ですが、『あのギャラリーにはギャラリーストーカーが出る』と、SNSで悪評が広まることが怖いです。ギャラリーからストーカーを生み出さないように気をつけています」

つまりは無料のキャバクラ嬢扱い

 高校生の時から作家活動を始めたという30代の女性作家、佐藤悠梨さん(仮名)。美大卒業後は、関東を拠点に活躍、さまざまな美術展でも入賞するなど注目を集めている一人だ。

「私は業界でよく言われる『ギャラリーストーカー』からはターゲットにされにくいタイプの人間だと思います」という佐藤さん。確かに、大きめのピアスをしていたり、強気な印象を与えるファッションやメイクをしている。

写真はイメージです ©getty

「彼らが狙うのは、多くが学生や卒業したての若い女性で、いわゆる優しそうな、抵
抗しないような人間です」と話す。

 都内のあるギャラリーには、作家の間でギャラリーストーカーとして有名な男性客がいた。年齢は60代くらいで、いつもトートバッグに展覧会のチラシを詰めてギャラリーに通っていたという。佐藤さんの作家仲間という20代の女性につきまとい、ギャラリー側や作家たちからは要注意人物としてブラックリストに載っていた。