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「別の男性が、その男性客との間に入って、私を離そうとしてくれたことは、とても嬉しかったです。この経験から、私もギャラリーなどで話しかけられて困っているような女性作家さんをみると、タイミングを見て話しかけ、割り込んだりすることにしています。ギャラリーストーカーに共通しているのは、作家を作家としてではなく、自分の話を聞いてくれるモノとして扱うことです。それは、無料で接待を強要するのとなんら変わらないものです」

なぜギャラリーストーカーを拒めないのか?

 しかし、佐藤さんによると、多くの若い作家はこうしたギャラリーストーカーを拒否することが難しいという。

「そういう人物は、自分が絵を買ったことがあることをアピールして、その作家の絵も買うようなそぶりをみせたり、自分が作家にとって利益のある人間であるというように振る舞ったりもします。多分、悪意はないのだろうと思います。ただ、自分の行動を客観視できてないのではないかなと。あなたと私の関係性は対等ではないということを知って、自分の行動を自覚してほしいです」

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 美術業界の作家と客の関係は、若い作家ほど立場が弱い。それを自覚しているのか、無自覚のままなのか、いずれにしても作家の弱みにつけ込んでくるのが、ギャラリーストーカーなのだ。

 なぜ彼らは、ギャラリーに出没するのか。佐藤さんの言葉から、そのアウトラインが浮かんでくる。

「美術がお好きではあるのでしょうけれど、孤独感もあるのかもしれません。ギャラリーに行けば、若い女の子が自分の話を聞いてくれる。でも、それはすごく贅沢なことなんですよね。普通は、友情や家族間の愛情などを築いた関係性の上で、話を聞いてもらいます。あるいは、キャバクラとかでお金を払って対価として聞いてもらう。でも、そういう人はきっと身近な人と関係性を結べず、お金も出したくない。そこで、ギャラリーの作家がターゲットにされてしまっているのかなと思います」