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“史上最高の2区”を生んだ近藤幸太郎と吉居大和…箱根駅伝2023「細かすぎる名場面」往路編

“史上最高の2区”を生んだ近藤幸太郎と吉居大和…箱根駅伝2023「細かすぎる名場面」往路編

2023/01/04
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【5区】「山登りに厚底はいかん」“四代目山の神”の条件は?

西本 昨年、“二代目山の神”の柏原竜二さんと、“三代目山の神”の神野大地選手と話す機会があったのですが、2人が共通して言っていたのは「山登りに厚底はいかん」ということ。

ポール でも世界中のアスリートが厚底シューズで記録を更新していますよね。

西本 僕も最初は意味がわからなくてポカンとしたんです。ただ、2人の解説を聞いて、なるほどと思いました。5区は何度かコース変更があったので、その度に区間記録がリセットされてきました。そこで柏原時代、神野時代の記録を現在の距離でタイム換算し直すと、ほとんど進化していないことが判明したんです。

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ポール 山登りで厚底シューズの恩恵はないということか。

西本 2人は斜度がきつい山登りで厚底を履くと足首が詰まってしまうため、むしろ薄底でなければいけないと言うんです。それを身をもって経験したのが神野選手です。毎年、箱根駅伝での山登り特性を見極めるために多くの大学が参戦する「激坂王決定戦」という大会があるのですが、一昨年、神野選手は、薄底のニューバランス5280を履いて、大会新記録で優勝します。ところが昨年の大会で厚底の代名詞であるナイキのヴェイパーフライで走ったところ、7位という結果に終わってしまった。違うシューズで同じコースを走ったからこそ、山登りは薄底がいいと分かったそうなんです。

ポール ただ今年の5区でも、多くの選手が厚底を履いていました。

西本 5区は特殊区間で、普段と違う走りが求められますが、選手たちは普段履き慣れた厚底を変えることに不安があるのではないでしょうか。その不安を跳ね除けて、薄底で5区に挑んだ選手が、“四代目山の神”になる可能性があるということです。

ポール 結局、今回も山の神は現れずということですね。

西本 いや、ひとりだけいるんです。2人の山の神がおっしゃっていたのですが、もし今大会で國學院大学の平林清澄選手が5区を走っていたら、山の神になっていただろうと。

5区_今回は2区を走ったが「山の神」になれる逸材・國學院大の平林 ©️EKIDEN NEWS

 2人の神から見ると、ガッツやフォームが“山の神”の条件と合致しているらしい。さらに平林選手は比較的薄いアディダスのタクミセンをよく履いています。来年こそ平林選手が5区を走るところを見たい――神々からの伝言をここに残しておきます。

構成/林田順子(モオ)

復路編」へ続く

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