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駒澤大・大八木監督が最後につかんだ「本当の勝利」…箱根駅伝2023「細かすぎる名場面」復路編

2023/01/04
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 大学駅伝三冠を果たした駒澤大学の大八木弘明監督が大会後に勇退を発表するなど、最後までさまざまなニュースが飛び交った今年の箱根駅伝。駅伝マニア集団「EKIDEN News」(@EKIDEN_News)の西本武司さんとポールさんが、往路に引き続き復路の“細かすぎる名シーン”を振り返る。(往路編から読む)

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【6区】「夢を叶えた」駒大・伊藤選手と「ずれない眼鏡」早大・北村選手

西本 6区では2人の選手に注目をしていました。1人目は駒澤大学の伊藤蒼唯選手です。

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ポール 当日の区間変更でエントリーされた1年生が、見事トップでタスキを渡しました。

西本 彼は大学三大駅伝のひとつ、出雲駅伝が行われる出雲市の出雲工業高校出身です。出雲駅伝では大会終了後、本戦を走れなかった控えの選手たちによる記録会が行われます。これを僕たちは「もうひとつの出雲駅伝」と呼んで毎年見学しているんですよね。あくまでも本戦出場が叶わなかった大学生のための大会なのですが、出雲工業高校の選手たちも地元ということで参加しているんです。

 このときに大八木監督にスカウトされて、駒澤に入学、箱根まで来たのが伊藤選手なんです。“二代目山の神”の柏原竜二さんもかつてちびっこ陸上教室で教えたことがあるそうで、当時から「将来は箱根を走りたいです」と言っていたそうです。

ポール 昨年の出雲駅伝で伊藤選手は、メンバー入りはしましたが走れず、「もうひとつの出雲駅伝」に出場してましたよね。

西本 ちなみにトラック競技では、最後の1周を知らせる鐘を鳴らすのですが、「もうひとつの出雲駅伝」で鐘を鳴らしているのは伊藤選手のお父さんでした。出雲駅伝にも全日本大学駅伝にも出られませんでしたが、あの鐘は箱根駅伝につながっていたのではと考えると、目頭が熱くなりましたね…。

 そして、もう一人の注目選手が早稲田大学の北村光選手。

ポール 順天堂大学の三浦龍司選手と同じ3000m障害を主戦場とする選手で、日本インカレの表彰台に上るぐらいの実力者です。

6区を走った早稲田大の北村(普通の眼鏡バージョン)©️EKIDEN NEWS

西本 彼のキャッチフレーズは「ぶれない走りずれない眼鏡」。ハッシュタグにもなっていました。3000m障害でハードルを跳ぶ時もずれない眼鏡を信条とする選手なのですが、今回区間3位の成績を残したことで山下りにも特性があることが分かりました。ただ、残念だったのは、普通の眼鏡ではなくてサングラスだったこと。普通の眼鏡姿の北村選手を見たかった。思わず「日差しの少ない6区でサングラスはいらんだろ!」って叫びましたよね(笑)。

ポール 来年はぜひいつもの眼鏡で走ってほしいですね(笑)