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中央大1区・吉居大和の“飛び出し”が時代を変えた――箱根駅伝2022「忘れられない名場面」往路編

2022/01/05

 第98回箱根駅伝は青山学院大学が同校が持つ大会記録を1分41秒も更新、2位と10分51秒差をつける独走状態で総合優勝を飾った。

 今年も沿道での観戦自粛が呼びかけられたため、駅伝マニア集団「EKIDEN News」(@EKIDEN_News)の西本武司さんとポールさんは、昨年に引き続き、文化放送に陣取ってテレビ観戦。

「2年間現地に行かなかったことで気づきましたが、箱根駅伝はテレビで観たほうが面白いですね」と話す2人に加え、早稲田大OBで大阪経済大学の陸上競技部で長距離ヘッドコーチを務める竹澤健介さん、元日のニューイヤー駅伝で4区を走ったばかりのサンベルクスの桃澤大祐選手もちょこっと参戦。豪華すぎる布陣で、今年も“細かすぎる名場面”を振り返る。(「復路編」もお楽しみください)

1区スタートの瞬間 ©JMPA

◆ ◆ ◆

【1区】時代を変えた中央大・吉居大和の飛び出し

ポール 昨年は超スローペースの展開の中、1人飛び出した東海大の塩澤稀夕選手の勇気を称えるハッシュタグ「#サンキュー塩澤」を1区の名場面として挙げました。

西本 今年は中央大の吉居大和選手に「#サンキュー吉居」を贈りたいですよね。

ポール 間違いないですね。

西本 2011年の1区で当時早稲田大の大迫傑さんが、序盤から飛び出したシーンを覚えている人も多いでしょう。今、箱根を走っている選手は、あの姿を見て「格好いい、俺もやりたい」と憧れてきた世代だと思うんです。ところがその割に、大迫さんを彷彿とさせるレースを見せる選手がこれまでいなかった。それを今年ついに吉居選手が実現してくれたわけです。

ポール 駅伝ファンは大拍手でした。

西本「箱根を変えるのは俺しかいない」と言わんばかりの勢いで見事区間新、MVPも取りましたからね。

集団から飛び出した中央大・吉居大和選手 ©JMPA

ポール 本人は「(集団が)遅かったから出た」と言っていましたけど、1km2分50秒のラップで遅いって「どういうこと?」という感じですよ。吉居選手は12月5日の日体大記録会で、1万mに出場して28分03秒90の自己ベストを出したばかり。これはU-20日本歴代2位の記録です。

西本 ただ、あの時はレース後も余裕があったし、27分台で走れそうなのに、なぜ狙わなかったのか? それが1区の走りでわかりました。日体大記録会では1km2分50秒ペースで抑え、箱根駅伝のレースペースを想定したものだったんです。

日体大記録会での吉居選手 ©EKIDEN News

ポール なるほど。

西本 吉居選手は5000mでオレゴン世界陸上参加標準突破を狙っている選手。箱根駅伝を走るためには、長い距離を少し遅いペースで押していく練習が必要になる。ただそれは5000mのトラックを走るスピードを削ぐことになる。そこで強度を強めに10000mを走っておいて、スピード感覚を落とすことなく、箱根と5000mのトラックとの両立を狙う調整を行ったのだと、そう読み取れます。

ポール 吉居選手が11月27日の八王子ロングディスタンス(29分23秒76)と12月5日の日体大、時間をあけずに10000mを2本走って身体壊さないのかな?と心配だったんですが、そういうことだったのか。

西本 10km通過が27分台と確認して「最後まで自信を持って走れる」、「距離には不安はなかった」と思ったというのだから、本当にすごい。時代は変わったと思いました。

ポール ところで仙台育英高校に吉居選手の弟の駿恭選手がいるんですよ。

兄と同じナイキのシューズ、手袋、アームウォーマーで走る仙台育英の吉居駿恭選手 ©EKIDEN NEWS

西本 そうそう。1週間前に行われた都大路(全国高校駅伝)で、エース区間の1区を走ったんだけど、彼が履いていたのが3年ぐらい前に発売されたピンクのナイキ・ヴェイパーフライ。実は兄の大和選手が高校3年の時の都大路で履いていたのが、まさにピンクのヴェイパーだった。そしてさらによくみると、彼がつけている手袋が中央大のものなんですよね。兄弟の信頼関係を感じましたし、春からは弟も中央大に入学します。来年の箱根駅伝は吉居兄弟のタスキ渡しに期待がかかります。